ASAKU® X Dragon Life
Part.1
この本の全13章。
アサク伝X真龍の魂
原作: 劉明昆
訳者:ZiON
あらすじ
神説年暦36772年
『神説大陸』の地表にある『人間界』『妖精界』『幻獣界』に、緑色の『鏡返ノ核』が出現し始める。毎回の出現場所が不定、中から核を守るための小さな魔物が同時に現れる。出現して24時間後赤色に変化し、半径一キロあたりにて『逆時震盪』でエネルギーを放つ。その力によって時間が過去へN年分に巻き戻し、そしてより強い魔物と、核を守護する『鏡返核獣(ミラーコア獣)』が召喚される。一つの『鏡返ノ核』に一回しか『逆時震盪』が発動しない、が、コアが出現するだけで周囲にいる動物や魔物の狂暴化を引き起こす。
『鏡返ノ核』の出現頻度が約3~7日、現在、コアを破壊する方法が見つかっていない。
『逆時震盪』が発生すれば、半径一キロの範囲内で過去へN年分のタイムリープが起こり、有機物でも無機物でも時間がN年分巻き戻される影響を受ける。例をあげるとつまり、「その場にいる人間はそのN年分若返る」という、実際の存在時間がNより少ない場合は、存在ごと消えることになるが、その範囲から出ると元通りに戻る。単なる時間の巻き戻しではなく、コアを守る魔物も多く出現するのと、そのN年前に存在していた者も一緒に現れるが、魂の持たない攻撃的なゾンビになってしまう。それでも、亡くなった人に会いたい人にとってはどうしても、期待を持ってしまうことでしょう。
魔物による破壊と、どれくらいの時間が巻き戻されるかは予測不能なため、誰も予兆が出る時に影響範囲内にとどまらない。『逆時震盪』が起きれば、逃げるしかない。
神説大陸に存在する種族の中で唯一、『逆時震盪』に影響されないのは精霊族だ。そして、『鏡返ノ核』は精霊界にだけ出現しないと言われている。理由こそ不明だが、『逆時震盪』に影響されない絶対的な防御力を持つ精霊でも、コアを破壊する能力がなく、魔物の出現を阻止するのには封印しか手段がない。
精霊聖王の命令により、『精霊界』光族の封印士・アサクとその仲間たちは、『鏡返ノ核』の出現場所を予測し、『逆時震盪』を測れる【不帰ノ羅針盤】を手に、“『逆時震盪』による危害と大量に出現する魔物の原因・『鏡返ノ核』を封印すべく”と、世界へと旅立つ。
第一章:封印士アサク(Action Chapter)
神説年暦36722年 8月12日 月曜日 午後三時
人間界の『フィル王城』の西南方向にある小さな村『エデンの村』では、『鏡返ノ核』の出現によって、村人たちを撤退させるべく、フィル王城から発遣された軍隊が、人々を守るため魔物と戦う。コアが赤色に変化し始め、残り時間30分あたりで、『逆時震盪』による大量の魔物に備えるため、軍隊が戦線を下げて村の外に包囲網を張ろうとしたその時、布陣の手前に急に『折畳ノ廻廊』が現れ、中から青い服に白マント、【聖印短劍】を持つ魔法使いらしき若い男と、その隣にピエロのようなぬいぐるみと、羽をもつ獅子、そしてかわいらしい女の子が一緒に出てきて、そのまま村へ向かっていく。慌てて止めようとする兵士に、男がこういう。
アサク「俺は精霊聖王のご命令により『鏡返ノ核』を封印すべくここにきた精霊光族の封印士、名はアサクだ。あんたたちみたいな役に立たない小物は早くどっかに逃げるんだな」
兵士 「な、この無礼もの!」
となりに立っている女の子がアサクにストレートを一発かまして、礼儀正しくこう言った。
イリヤ「精霊土族の猛獣使い・イリヤと申します。兄のご無礼をお詫びいたします。こちらの軍隊をお率いになっている将軍様はどなたでしょうか」
この時、将軍らしき男が布陣から出てきて、礼儀正しく挨拶をする。
スタール「精霊界からのお力添え、感謝いたします。俺はフィル王国軍団団長・スタールと申します。どうかコアを封印し、危害をお治めくださいませ」
イリヤ「村にはもう全員撤退しましたでしょうか」
スタール「ええ、全員撤退させました」
アサク「よし、なら安心して暴れるんだな!」
そう言って、ピエロのようなぬいぐるみと羽をもつ魔獅子を連れて村へ駆け込んで、魔物を戦うためにコアへと前進する。
イリヤ「イリアは魔獣の狂暴化について調査するために来ましたの。コアの影響で普段おとなしいものでもとても攻撃的になってしまいますので、どうかお気を付けてください」
イリヤはスタール団長へ一礼してからアサクに続けて村へと入った。
大量の魔物が襲い掛かる。アサクは【聖印短劍】で迎え撃つ。【聖印短劍】に切られた魔物はすべて封印術によって身動きを取れず、そしてその属性の力を短剣の中へ吸い込んで蓄えることができる。ほかの物に触れても同じ効果で、例えば石なら土属性の力を吸い込むことができる。
アサクが魔法を発動するのには、左手に正三星陣、右手に逆三星陣を放ち、吸収した属性の力を手の魔法陣に付与すれば、陣魔法で攻撃できる。敵が複数の場合は逆三星陣で拡散式の魔法を、一点攻撃する場合は正三星陣で集中式の魔法を発する。だが陣魔法の威力は、吸収した属性の力強さで決められる。
イリヤは【愛のムチ】で戦う。このムチに叩かれると、悪の魔獣は浄化され、正常の魔獣ならおとなしくなって攻撃してこなくなる、イリヤの友達になって一緒に戦ってくれることも。
コアに近づければ近づくほど敵が強くなり、アサクが一気にコア近づけることを決めて、【聖印短劍】をしめて、ピエロのようなぬいぐるみへ叫ぶ。
アサク「来い、ゴーストカード! 【日輪ノ剣】へ幻化してくれ!」
ピエロのぬいぐるみが【日輪ノ剣】へと変身し、剣身から太陽のような輝きを放つ。アサクがこの神剣を振りかざし魔物を迎え撃つが、日の光に当たらないところに入ってしまう途端に、剣の輝きが弱まり、力を失っていく。この時に剣からゴーストカードの声が発した。
ゴーストカード「だめです! 光のないところだと【日輪ノ剣】は力を失ってしまいます! もうすぐ日が落ちます。早く片付けないと!」
アサク「わかってる! すぐ片付けるよ」
アサクが魔獅子の背に飛び乗り、コアへ駆け込む。もうすぐ赤くなるコアを前にして、突然、どこか赤子の鳴き声が聞こえた。声を辿ってみると、コアのすぐ近くにある民家の隅っこに隠れている、赤子を抱えている若い女を見つける。
アサク「やばっ! 間に合わない!」
そう言って、アサクが若い女を、イリヤが赤子を抱き上げて、すぐ村の外へ出ようとしたが、時はすでに遅く、『逆時震盪』が起きてしまった!
強烈な震動波が拡散し、周りの景色も変化し始めて、女は塵となり消えていく。なのにまぜか、イリヤが抱えている赤子はなんの変化も起きなかった。驚きながらもイリヤは悲しく叫ぶ。
イリヤ「みな離れたって言ったのに! なんで!」
アサクが懐に入れてある【不帰ノ羅針盤】をみて、巻き戻された時間はちょうど80年。ゴーストカードがアサクに先にコアを処理しないと危害が広がると進言した。イリヤに赤子を守って村から離れるように指示するが、なぜか赤子が起きてからアサクにすっかりなついて、抱いてもらわないとすぐ泣き出す。仕方なく赤子をおんぶしてコアの封印に手掛けるアサクは、イリヤにお父さんって揶揄された。
アサク「あーもう、うるさい!」
赤子がその怒鳴りで泣き出してしまい、二人が同時に人差し指を口の前にかざして「しー」って言ったらまた静かになった。
アサク「コアを守護する魔王が出てきたな、とどめをさしいこう。さっさと任務を終わらせて帰ろうぜ」
このコアの守護魔王が巨大な食人花で、毒をもつ粘液とつるで攻撃してくる。アサクは行風術を使って攻撃をかわしながら飛んでくるつるを切るが、なかなか近づけてとどめをさせないでいる。
奇妙なことに、赤子は戦いの真っ最中でもまったく暴れず泣かずに、すごく静かだった。
イリヤがさき手懐けた短足イノシシを乗って攻撃を試みるが、魔王が強すぎて逃げ回ることしかできない。
この時にもう日が落ちてすっかり夜になってしまった。
ゴーストカード「やばい! もう日の光が――」
そう叫んですぐ【日輪ノ剣】からもとのぬいぐるみの姿に戻ってしまった。アサクはやむを得ずに【聖印短劍】で迎撃する。
アサク「くそ! 【聖印短劍】じゃ効果がない。吸収した属性の力が弱すぎる、もっと大きな炎じゃないとこいつを燃やせない!」
そして魔獅子に向かって叫ぶ。
アサク「俺に炎の攻撃を三回してくれ!」
魔獅子は宙返りして距離を取り、アサクに向かって、口から巨大なファイヤーボールを吐き出す。
アサクは左手を高く上げて手のひらをかざし、正三角形の魔法陣が魔獅子が放たれたファイヤーボールを吸収した。高いところへ跳んで、すぐ食人花の口の前に駆け込み、左手が拳に握って後ろに引き力を蓄えると、三つのファイヤーボールが一つに集中!
そして手を前にかざし、拳を開けて魔法を放つ。
アサク「正三星陣魔法! 火炎竜巻!!」
猛烈な火炎が食人花を燃やし尽くした。アサクはすぐコアの前に行き、透明な水晶で作られた箱【聖獄ノ籠水晶】を持ち出して、表面に刻み込まれている呪文で封印術を発動する。封印を行う間は魔獣がまた襲い掛かるが、魔獅子が守ってくれたおかげでみな無事だった。
眩しい光が放たれ、結界が築かれた。コアを無事封印したが、周りの景色はもうもとには戻れない、80年前のままだった。
助かった赤子を村人に渡そうとしたが、みな”あいつは悪魔の子だ”と騒ぎだして、誰も引き取ろうとしない。それは、赤子の母親が倫理を反して、父親が誰なのかを明かさずにその子を産んだからだ。赤子はなぜかアサクから離れようとしないし、仕方なく連れて行くことにしたふたり。イリヤは手懐けた短足イノシシとお別れをしてから、【折畳ノ廻廊】を起動し、二人は精霊界へ戻った。
第二章:防ぎきれないこと
神説年暦36722年 8月13日 火曜日 午前十一時
精霊王城の会議室にて会談が行われている。参加するのは精霊聖王・オデロス、オーカ将軍、ハプ司祭、精霊の姫君・ジェフロ、アサク、イリヤ、そして人間界から連れてきた赤子だった。
アサクは片足で跪いて、精霊聖王・オデロスにエデンの村でのできことを報告し、その傍らにイリヤがゆりかごに眠っている赤子をみている。
アサク「ことは以上です。聖王様」
精霊聖王・オデロスがアサクに表を上げようといい、となりのオーカ将軍に見解を求める。すると、オーカ将軍の顔がすこし赤いのを気づき、叱るように言う。
オデロス「そなたたちまさか、昼間から酒を飲んだではあるまいな」
オーカ「そ、それはその、ハプ司祭が造った酒が良すぎて、目覚ましにちょうどいいからで……」
ハプ「オーカ、おぬし……せっかくよい酒を取っておいてやったのに」
聖王オデロスがお怒りの様子で少し咳払いをしたら、周りがしんとなってしまった。それから手を一振りして、ハプ司祭がすぐ注いておいた盃を聖王に渡す。一気に飲み干してまことにうまい!と言ってからまた真顔でアサクに続けようと合図をした。
ジェフロ(不機嫌)「父上までおふざけして!まだ公務が残っているのでは」
オデロス「大事ないよ、精霊界がいつものように平和でのんびりだ」
ジェフロ(手を腰にあてて、呆れる)「もう、少しは危機意識を持たないと!」
アサクが頭を掻いてから、片手を顔に覆いて呆れていう。
アサク(独り言みたいな)「この老いぼれたち、本当に『鏡返ノ核』のことを気にしているのか」
オーカ「我々精霊界はそもそも外界のことを干渉してはならん決まりだが、大賢者聖竜王様が、『逆時震盪』が精霊しか対抗できないからと天神界の神託だといい、聖王様にエデンの村のコアを処理するよう、おまえを指名してな」
アサク「またあの陰謀家の聖竜王?やつの言いなりにならなくだって」
オデロス「天神界のお達しだ、仕方ない」
アサク「くそ……」
このとき、ハプ司祭は赤子に近づき、よく観察する。
ハプ「ふむ、この人間の赤子、『逆時震盪』の影響を受けないとは、確かに不思議だ」
同時にイリアが赤子を包み込んでいる毛布を開けてみると、毛布に<ADAM(アダム)>が書いてあて、赤子の背中に、虹紋章のバースマークがみえた。それに驚いたか、聖王がすぐ近寄って赤子の背中を確認し、オーカ将軍も続いた。
オデロス(文字ごとはっきりと)「なんと……虹、聖者」
オーカ「ではこの赤子こそが新たな虹聖者か、名は……アダム」
ハプ「アサクがエデンの村へ出向くのも奴らの計画通りってわけか。一本取られたわい」
アサク「で、どうすればいいですか。この子ずっと俺にべったりで、起きて俺に抱っこされてないと気づくとすげー泣きわめくんですよ。いっとくけどベビーシスタはいやだからな」
オーカ「待った! アサク、前の二つのコアの出現場所、覚えてるか?」
アサク「一つは妖精界の『時間図書館』で、もう一つが人間界・フィル王国東南部の『フジルス砂漠』です。二箇所ともすでに『逆時震盪』が起きてしまったから、聖王様のご命令とおりに、まだ震盪が起きてないエデンの村へいきました。時間的にいけたはずだったけど、この子を助けたため結局封印が間に合いませんでしたが」
ハプ「人間界に出現した二つのコアとも、フィル王国の近くか、どうも匂うなぁ…」
オデロス「いかん! オーカ将軍、すぐ禁衛軍を集結し戦闘態勢に入りたまえ!」
聖王の指示で、オーカ将軍がすぐ会議室から飛び出し、警報を鳴らす。
アサク「どういうことですか??」
ジェフロ「早く赤子を守って」
イリアすぐまだ眠っているアダムを胸に抱きしめた。
ハプ「これは、とんだ企みだ! 『逆時震盪』を利用し、『時間図書館』で偽りの歴史を作り、『フジルス砂漠』にて過去に存在した『ミラージュレーク』を呼び戻した。そしてこの子はやつの手駒…震盪の影響をうけないとわかっててあそこに置いた。おぬしがこの子を連れて【折畳ノ廻廊】で精霊界に戻ることで、震盪の痕跡が残り、もともとコアが侵入不可能の精霊界に隙間が生じてしまったのだ」
まさにその時、急にとどろきのような音が響いて、精霊王城が地震でも起きたように揺らいだ。
ハプ「この子が起きて騒ぎだしたら見つかってしまう。わしが深い眠りにつくように術をかけとくよ。イリア、アダムは任せたぞ。アサクは早く敵襲に対応しろ!」
イリア「了解いたしました。ちゃんと守って見せます」
アサク「そこまで深刻ですか! すぐ向かいます! ゴーストカード、魔獅子、ついてこい!」
二人の従士を召喚して、三人はすぐ音がした場所へ急いだ。着いた時には精霊王城正殿の真上に時空の裂け目ぽっかり空いてしまい、すでに大量の魔物が湧き出している!手前にオーカ将軍が禁衛軍を率いて応戦してるところだった。
アサク「なんてことだ!」
アサクはすぐゴーストカードに【日輪ノ剣】に変身させ、魔獅子とともに戦いに加わった。聖王オデロスもジェフロを連れて正殿に到着。二人の周りには禁衛軍が守りを固めている。同時に、九尾妖狐が時空の裂け目から正殿へと降りってくる。
九尾妖狐「あらまあ…ふふ、美しきあたしをこんなにも大勢で出迎えてくれたのかい、うれしいねぇ、さあ、情熱的な歓声をあげなさい」
アサク「この変態野郎!」
その時、全域空間防御を担う精霊兵士より報告が届いた。
精霊兵士「報告! 聖王様、精霊聖地にて『鏡返ノ核』が出現!」
聖王オデロスがすぐ聖地を守るようにオーカ将軍に指示し、正殿の魔物が聖地に行けないようにと一部の禁衛軍兵士を残し、後をアサクに任せて、その場を立とうとしたが……
ジェフロ「わたくしは残ってアサクに協力するわ!」
オデロス「だめだ! すぐオーカ将軍に続いて聖地へ向かいたまえ」
聖王オデロスがオーカ将軍、ジェフロとイリアを率いて正殿後方にある廊下を通り、精霊聖地へ向かう。
正殿に現れた魔物たちがアサクと近衛軍に着々と退治されていくが、なぜか九尾妖狐がまるで見世物を見ているようにびくとも動かないまま、やがて魔物が彼だけとなった。
九尾妖狐(高笑いして)「スポットライトはあたしだけを照らすものよ。どう? スーパースターみたく輝いているでしょ」
そう言って突然と手を上げ、強い衝撃波を放つ。
精霊禁衛軍を守ろうと、アサクはすぐみなを庇うように最前列に出て、全身から聖光を放ち、【獅幻神裝】を纏って九尾妖狐の攻撃を受け流した。
左従者のゴーストカードが変身した【日輪ノ剣】を手にかまい、右従者の魔獅子が変身した【獅幻神裝】を纏った姿こそ、アサクの完全なる武装なのだ。
アサク(禁衛軍に向かって)「おんたたちはもう聖地に向かってくれ、ここは俺に任せろ!」
禁衛軍兵士「了解しました!」
返事した禁衛軍の兵士たちはすぐさま聖地へと駆け付ける。
九尾妖狐「あたしは、鏡界から降臨した陰魔六将軍、名は九尾妖狐。親しくして~“九ちゃん”って呼んでもいいのよ。さすが天神界の力を得た者ね、アサク。神と精霊の融合体か、本~当、反則よね」
アサク「なんなんだおんたは! 九ちゃんとか、誰が呼ぶか! あいにくこっちは遊んでる暇ないんだな、今片付けてやる!」
九尾妖狐「さて、君ごときで、このあたしに勝てるかしら?うふふ……」
笑い声を発したと思えば、もうアサクの目の前に瞬間移動して、攻撃をかまってきた!
九尾妖狐の攻撃が思ったよりも重く、全身武装した状態のアサクでも、【日輪ノ剣】で攻撃を受け流しながら陣魔法で魔法攻撃を吸収して反撃をするが、どうも苦戦に陥ってしまう。幸い、【獅幻神裝】の防御でなんとか保つことができた。
素早く動きながら攻撃してくる九尾妖狐は余裕ありげに笑いかけてくる。
九尾妖狐「はははっ、神と融合したせいで、もともと持ってた精霊の力を失って、元素魔法が使えなくなったのね。それで受けたものを吸収して反撃に使うしかなくなったわけか。なるほど、これはこれは、神様って意地悪いねー、はははは」
アサク「なんでそこまで俺に詳しいんだよ!?」
九尾妖狐「それは~愛してるから♥だよ(ウィンク)」
アサク「気持ち悪っ!」
九本の尾が一斉に伸び、九尾妖狐がセクターなポーズを取ってこう言った。
九尾妖狐「さあ、あたしのすべての愛を乗せる、最強の一撃をうけてごらんなさい♥」
先と比べものにならないほどの莫大な魔力が九尾妖狐の体に集中していると感じたアサクは、この一撃で勝負がきまるとわかった。
アサク(テレパシーでゴーストカードと魔獅子に)「あれを使うしかない」
ゴーストカード(テレパシー)「マスター、本当に使いますか? まだ完全に使いこなせてないのに、発動した後力が抜けて、いつ回復できるか分からないのですよ!」
魔獅子(テレパシー)「でも確かにそうするしかなさそうです。自分ももう攻撃を受けきれません。まずはやつ倒すことを考えましょう。そのあとは自分たちがマスターを守ります」
心で会話をかわす僅かな間に、九尾妖狐はもう力を整えて、技をぶつけてくる!
九尾妖狐「九重狐撃・滅骸破!!」
まさに同時に、アサクは宙返りして背中から天使と精霊の翼が生えてきて、【七属性ノ鍵】がアサクを中心に飛び回り聖光を放ちながら、七本の巨剣となる。
アサク「俺にはまだ神の力がある! 七鍵衝殺陣!!」
互いの大技が宙にぶつけ合い、九尾妖狐が避けきれずに重傷を負い、間一髪で時空の裂け目を通って鏡界へ逃げ帰って、あまりの強力で精霊王城もほとんど壊滅してしまった。
ゴーストカードと魔獅子が変身を解いてもとの姿に戻り、アサクも技の影響で全身の力が抜けてしまって、意識はちゃんとしてるが、もうまったく動けない状態だ。魔獅子はアサクを背負ってゴーストカードとともに精霊聖地へ向かう。
これで、数万年以来一度も侵入を許したことがないと誇る精霊界も、正式に破られてしまったのだ。
精霊聖地に着くとそこに『鏡返ノ核』が中央の祭壇に現れていて、聖王オデロスが部下たちを率いて湧き出している魔物たちと戦っている姿がみえたが、すでに力が残されていないアサクには何もできない。
アサク「どうしてハプ司祭が、早くコアを封印しないんだ?」
第三章:永凍絶界
神説年暦36722年 8月13日 火曜日 午後二時
精霊界で最も重要な場所『精霊聖地』に、『鏡返ノ核』が出現、ハプ司祭がコアの近くにいながら、魔物ばかりかまっていてコアを封印しようとしない様子。
魔獅子がアサクをハプ司祭のとなりまで連れいった。
アサク(虚弱)「どうしてすぐコアを封印しないんですか。【聖獄ノ籠水晶】をくれたのはあなたなのに……」
ハプ司祭「【聖獄ノ籠水晶】は聖竜王が天神界から持ってきたもの、おぬししか使えないといいおった。だから、コアを封印する任務をおぬしに与えたのだよ」
アサク(虚弱)「そんな……俺はもう、【聖獄ノ籠水晶】を発動する力も残されてない。まさか『逆時震盪』で精霊聖地が破壊されるのをただ見るしかできないというんですか」
ハプ司祭「とにかく休んで、少しでも回復に努めるのじゃ」
この時、イリアが泣きながらこちらに走ってきた。
イリア「うう……黒マントの男にアダムを奪い去らわれてしまいました。イリアでは全然太刀打ちできなかったの。ごめんなさい、イリアのせいだわ、どうしよう……」
アサク「あなたは悪くねえよ、もう泣くな」
ハプ司祭「精霊界に来てアダムを奪うことも、やつの計画の一環なんじゃろうな」
オーカ将軍が精霊禁衛軍を率いて攻撃の陣を組んでコア周辺にいる魔物たちに反撃を繰り返し、聖王オデロスがコアの真上に雷撃の術をかけてコアを打ち砕こうとするが、まったくの徒労だった。
この時に、強い黒き光が聖地の高台から放て時空の裂け目を作り、その中から黒竜に乗っている騎士の姿が現れた。彼は響き渡る声でいう。
フィリップス「俺様は陰魔二将軍、フィリップスだ。鏡界を代表し、正式に精霊界に宣戦布告を告げる!」
このフィリップスと名乗った黒竜を乗る騎士から放たれる特殊な魔力に、ただならぬ恐怖を感じたかのように、周りの魔物たちがみな身動きがとれなくなっている。
アサク・オーカ「これは! 失踪した風族の精霊・サルの霊力!?」
アサク「どうしてあいつから精霊の力を感じるんだ!」
オーカ「いや、正しくは風属性の精霊の力と闇属性の魔力が混ざり合っている強大の力だ! この精霊界では相手になれる人いないかもしれん」
オデロス「……」
フィリップス将軍が手を振ると、黒竜から強い竜巻が襲ってくる。精霊禁衛軍軍団の大半が竜巻の勢いに耐えきれず吹き飛ばされ、何人か苦労して防御術を立ち上げて対抗しようにもあまり効果が見られない中、なぜかジェフロにだけまったく影響がなく、すこしもダメージを受けていない。その様子をみて、聖王オデロスはすぐみなに指示をだす。
オデロス「ジェフロ姫の後ろに隠れろ!」
精霊軍団が群れとなってジェフロの後ろにくっついて、ジェフロが移動すると軍団も続いてくという、なんとまあ奇妙な絵面になった。
ジェフロ「どうして私の後ろに隠れるのよ。私はあのフィリップス将軍というやからを懲らしめにいきたいの!」
そういって奔ろうとするけど、姫が動いてしまうとみな吹き飛ばされるからと、周りに止められる。
ジェフロにだけ起きるこの現象に気づき、フィリップス将軍が急に激動した様子でジェフロに駆けてくる。みながジェフロをかばおうとする時に、まさかの攻撃ではなく、フィリップス将軍がジェフロを抱き込んで強引にキスした。その場にいる全員が目の前に起きたことに驚いていると、軍団に襲い掛かる竜巻もフィリップス将軍のこの行動でやんだのだ。
ジェフロが我に返って顔を真っ赤にし、怒りと恥ずかしさが混ざり合い、フィリップス将軍を突き出して、ぱっとビンタを食らわせた。
ジェフロ「この……不届き者! この私に無理やりキ、キスするなど! 何様のつもり!」
赤くなる頬に手を当て、ガッカリした様子でフィリップス将軍はいう。
フィリップス「君は…忘れたのか……」
そしてすぐ近寄った黒竜に乗り、高く飛んで離れた。
遠くに離れていくフィリップスの後ろ姿を見て、ジェフロはなぜか、胸が悶々と締め付けられる気がした。指で先強引に奪われた唇を撫でてみると、涙が勝手に流れてくる。
ジェフロ(心の声)「この悲しい感情はいったい……?」
フィリップス将軍が精霊軍団の表に戻り、大声で言い放つ
フィリップス「精霊界の最強のものを出してこい!」
すると、オーカ将軍が陣から高く上へ跳んで、マウントであるグリフォンを召喚して背中に乗り、フィリップス将軍と対峙する形になる。
オーカ「俺はオーカ将軍じゃ。精霊界最強の守護者が相手してやる」
フィリップス「ほう、この時をずっと待っていたぞ。やっとオーカ将軍とやり合う機会がきたか」
オーカ「一つ、疑問に答えてもらおうか」
フィリップス「ふんっ、二つとも答えてやるよ。一つ、そう、俺様そこが、かつて失踪した風族の精霊・サル。二つは……お前らが知ってるサル、もともと二人いたのだ。一人が精霊界に、一人が鏡界にいる。だが、俺様の本当の名は、フィリップスだ」
すでに弱っているアサクをちらっと目をやり、フィリップスは続いてこういった。
フィリップス「そのアサクと同じ、”ダブルフェース”をもっている」
オーカ「なんだと!」
アサク(心)「”ダブルフェース”……ってなんだ?」
この時、ゴーストカードがフィリップス将軍が身につける剣をみて、慌ててアサクに話しかける。
ゴーストカード「大変です。あの人、【月輪ノ剣】を持っています!」
アサク「そんな、まさか」
ゴーストカード「僕のセンサに間違いはありません。なぜなら僕と【月輪ノ剣】は、セットのゴーストカードだからです!でも、なぜあの人が【月輪ノ剣】を持っているんでしょうか」
フィリップス「国としての挨拶はここまでにしょう。そろそろ戦いを始めようか、まずは……」
フィリップス将軍が指を鳴らすと、精霊聖地に現れたコアが急に色が変わって、『逆時震盪』を引き起こす状態になった!アサクを含めて精霊族の全員が、自分の目を疑わずにいられない!
アサク「あいつ! 『逆時震盪』を加速させやがった!!! 早くコアを封印しなきゃ!」
でも依然と体力がもどらないままのアサクは、魔獅子の背中から降りる気力もない。
アサク(魔獅子に)「コアに触れるように、近づけてくれ」
魔獅子は指示に従ってコアのすぐそばまで近づけて、ゴーストカードがアサクの右手を支えて、コアに触れた。触れた瞬間に、コアの色の変化が明らかに遅くなったものの、アサクが冷や汗をかいてひどく苦しい表情をしている。
ハプ「よせ、アサク。それでは封印は無理じゃ、ただの時間稼ぎにしかならんし、そのままだとおぬしが力尽きでしんじまう!」
アサク「ただの時間稼ぎでもいい、もう、今の俺にはこれしか…」
するとイリアが自分の手をアサクの手に重ねた。
イリア「イリアも、お兄さんと一緒に精霊界を守ります!」
アサク(頭を少し下に向いて)「ああ」
オーカ将軍がグリフォンに乗ってフィリップス将軍へ突撃をかける。二つの世界での最強戦力を持つ男たちの対決は激しく繰り広げられて、交わる攻撃の震動波で近くにいる魔物も、一騎打ちを見守る精霊軍団も痺れさせられて、ただその場に動けずにいた。
長い戦いとともに時間が過ぎ去り、アサクもそろそろ限界を迎えてしまう。
フィリップス(オデロスに向かって)「精霊聖王よ、一つ教えてやろうか。この【鏡返ノ核】に設定されたタイムリープの時間は、ちょうど1000精霊年前だよ(人間界約41年)! そう、その精霊八大族の時代に!」
フィリップス将軍の言葉で、精霊族のみなが一気に顔が青ざめた。
オーカ「好き勝手にはさせん。混沌極まりないの1000精霊年前などに戻ってしまったら、今の世界線の神説大陸の全面的壊滅を招いてしまう!」
オーカ将軍が奥手の” 圓気裂衝砲”を発動しようと同時に、まさかのフィリップス将軍も、同じ大技をかけて決着をつけようとした。
オーカ「ほう、おまえは確か、俺のまなでしの精霊界のサルだな!」
が、それを聞いたフィリップス将軍はただ微笑んで、答えようとしなかった。
二つの技がぶつけ合うと同時に、アサクとイリアの力ももうコアを抑えることができなくなり、コアが鮮やかな赤色を放ち、『逆時震盪』はまさに引き起こされようとしていた時に。
オデロス「精霊界の王として、精霊界をいまここに壊滅させるわけにはいかん。すべての空族精霊よ、集結し伝送陣を発動せよ!」
空族精霊たちがすぐさま伝送魔法を発動する。
オデロス(オーカ将軍とハプ司祭に向かって)「精霊界を守りたまえ!」
オーカ将軍とハプ司祭はすぐ聖王オデロスのもとに駆け付けた。
ハプ(アサクに向かって)「いけ! できるだけ遠くへ逃げるのじゃ!」
聖王オデロスが手のひらに特殊のトーテムをかけると、トーテムが一匹の鷹となり、地中に向かって飛び潜った。そしてオーカ将軍とハプ司祭に頷きで合図をして……精霊界最大な封印術を発動する。
オデロス・オーカ・ハプ「永凍絕界!!」
『逆時震盪』が始まる頃に、空族の伝送魔法も発動した。
フィリップス「くそ! 精霊界ごと時間を凍結しようだと! 俺様はこんなところに閉じ込められたりはしない!」
そういってすぐ時空の裂け目を開けたが、ジェフロを一目みてから裂け目に入って姿を消した。
『逆時震盪』は永凍絕界によって止められてが、同時に伝送陣も停止してしまい、すべての精霊を伝送することはなく、アサクは幸運にも、伝送で逃げることができた。その瞬間に、ハプ司祭の声が聞こえた。
ハプ「精霊界を救うのには、精霊女王アランダを見つけるしかない。頼んだぞ、アサク」
アサクは涙が止まらないまま、伝送通路に入り、そのまま気絶した。
この戦いの末、精霊界の時間は止まったままになり、誰も入ることができず、そして、誰も出られなくなってしまったのだ。
第四章:人魚之淚
神説年暦36722年 8月19日 月曜日 午前十時
目覚めたアサクが初めに聞こえたのが、ゴーストカード、魔獅子とイリアの三人の声だった。
ゴーストカード、魔獅子、イリア「よかった!」
ゴーストカード「マスター! やっとお目覚めですか!」
イリア「もうーお兄さん! 二度と目覚めないかと心配したんだから!」
アサク「俺は……大丈夫だ。ここどこだ?」
ゴーストカード「僕たちは幻獣界の人魚国に伝送されたのです。女王様がこのお部屋を手配してくださいました!まさか一週間も眠り続けるとはな」
周りを見渡してみたら、さんさんと輝く日の光が水を通して照らしてるとても暖かい部屋だが、どう見ても女性の部屋だ。
ゴーストカード「人魚国には女性しかいませんからね」
アサク「ええ……」
アサクの身の周りにたくさんの花が飾っている。
アサク「で、この花はいったい……」
ゴーストカード(肩を軽くすくめてニヤっと)「マスターのファンたちから送られてきたものです。もう人魚国丸ごと虜にしちゃってるくらい大騒ぎですよ。お見舞いといって花を何度も持ってくる子もいます。なにせ女王様が自ら『美しき眠りの精霊王子』という異名をつけちゃうくらいですからね……」
魔獅子が顔をそらして笑いをこらえている。
そのとき、外から雑踏とした人の声がしてきた。ゴーストカードが、もう起きたってバレたら大変な目に合うから、早く寝たふりをするようにとアサクに合図し、ぬいぐるみのふりをした。アサクが横になって寝たふりをすると、やはり十何人の人魚の女の子がプレゼントと花をもって部屋に入ろうとする。魔獅子がすぐ姿をけして入口を塞ごうとしたが意味がなく、女の子たちが部屋に駆け込んできて、祝福を込めてアサクの頬にキスして、わいわいとはしゃいでからやっと部屋をでた。
皆出た後、アサクは起き上がり、キスされた頬を少し撫で顔を赤くして、満足しそうに笑った。それをみて、隣のイリアは不機嫌そうに口を尖らせた。
ゴーストカード(アサクの頭に一発殴って)「しっかりしなさい!」
アサク「俺見世物じゃねえし。早くここを出て情報を探そう」
イリア「お兄さん今や『美しき眠りの精霊王子』ですから、そのまま外にでると騒ぎになっちゃいます。イリアが変装して差し上げますわ」
人魚国は結界によっと海の中に沈んでいる王国で、結界の中なら、地上と同じように呼吸ができるところ。
この日、大通りに変な歩き方をする一人の人魚(?)の女性(?)がいた。そう、それはまさに、髪型を変えて化粧もし、方にピエロのぬいぐるみを乗せたメイド服姿のアサクだ。その隣に人魚に成りすましたイリアと、術で姿を消した魔獅子。
アサク「なんで俺が女装しなくちゃならねえんだよ! 不格好だし、下スースーするし!」
イリア(笑いながら)「パンツを履かないからでしょう」
アサク「女のパンツなんてぜってー嫌だ!」
ゴーストカード「こうでもしないと、街中で正体ばれたら、何千何万の人魚の女の子が寄せてきますよ」
魔獅子「さすがにそんな大勢は止められませんな」
アサク「ここ一体どうなってんだよ。空気もすごく濁ってる気するし、風もない、なんか変な感じ」
ゴーストカード「人魚国は昔からとても排外的で、特に同じ幻獣界の百獣国とは敵対関係です。僕も魔獅子も百獣国の民なので、気付かれないようにしないといけません。人魚国は精霊界との関係がとても良いと聞きます。それで、こちらに伝送されたかもしれません」
二人が会話している間に、イリアがすれ違った天使魚と交流し始める。
アサク「魚と話してんの?」
イリア「イリアはすべての生き物と意識疎通ができるのです。かわいい子をみたんら友達になりたくなるんですよ。」
アサク「俺はゴーストカードと魔獅子としか話せねえから」
この時、向かいに何人のメイドを連れて歩く貴婦人らしきの女性がアサクをしげしげと観察する。今にもバレたかとはらはらする二人だが……貴婦人はイリアを眼中にない様子でアサクに話しかける。
貴婦人「あら、ちょっと胸が足りないけど、なかなかじゃないの~あなた、名は何という?どちらの使いなの?」
アサク「お、おそれいります。あ、アクリアといいます。えっと、マダムメールに仕えております」
貴婦人「なんと! あなたのような美人が、あのメールに仕えてるなんて、もったいないわ!」
貴婦人すぐ懐からパールを十個取り出してアサクに渡してこういう。
貴婦人「はい、持って、これは前金よ。すぐあのばばあのところを出て。明日からヴィタリス公爵邸に来なさい」
勝手に言い終わると、パールを手にしてポカンとした顔のアサクたちをお構いなしに、メイドたちを連れてその場を去っていった。
アサク「おっぱい足りないとか……」
イリア「アクリアって……ははははは~女装でもお気に入りされちゃって、すごいですわお兄さん!しかも、デタラメに言ったのに、まさか本当にマダムメールがいるなんて、はははは」
となりにいる魔獅子がもう笑いすぎて腰がぬけそうだ。
アサク「笑う場合か! 大事な任務があるんだぞ! コアがどうなってるわかんないし、ハプ司祭が精霊女王を見つけて精霊界を救えと俺に言ったんだ。メイドごっこしてられるかつうの!」
ちょうどおなかが鳴ったから、近くのレストランが見えて、とりあえず腹ごしらえをしようと店に入った。イリアが天使魚とバイバイして、アサクと一緒に一番目立たない隅っこの席に座ると、メニューに目を通す。
アサク(メシューを見て)「ワンセットでパール一つ!?」
ゴーストカード(すぐアサクの口をふさぐ)「しー、大声出さないでください。嫌なら女王様が用意してくださった部屋にお戻りになれば?なんでも使い放題ですよ」
アサク(プルプルと)「ぜってーやだ。(ちょっと恥ずかしく)まあ女の子にモテるのは悪い気しないけど…」
イリア(一発殴って)「お兄さんのスケベ!」
店員「お決まりですか」
アサク「セットを四つくれ」
店員「お二人でそんなに? 本当にたべられますか?」
アサク「大丈夫。食べられるよ」
店員「かしこまりました。ではパール四つ、いただきました。すぐご用意いたしますね」
食事が運ばれたら、アサクは飲み込むようにパクパクと食べて、ゴーストカードと魔獅子はテーブルの一角にコッソリと食べた。
アサク「俺たちはやく人魚国から出るべきだと思う。百獣国へ行って俺の友人のブラッド国王に助けをもとめよう」
魔獅子「そうはいっても、人魚国では【折畳ノ廻廊】の使用を禁止してるから伝送は無理です。地上の百獣国へ行くのには連結通路を通らなければならないが、もちろん警備がつけてるから、人魚女王の許しがないと通してもらえないんじゃ…」
イリア「それに、何の挨拶もなしに消えるなんて、失礼極まりないことですわ。ここはやはり一度女王様にお礼を申し上げに謁見をした方がいいとイリアは思います。」
ゴーストカード「人魚国と精霊界とは交流がありますが、わざわざ『美しき眠りの精霊王子』なんてマスターの存在を宣伝することに、なにか良からぬ意図を感じます。」
アサク「でもなぁ、戻らないとすると、金を稼がなきゃだな……」
イリア(笑いながら)「お兄さんにメイドになって、イリアたちを養っていただくしかほかありませんね」
ゴーストカード・魔獅子「そうですね」
アサク「なんで俺ばっかりー」
楽しい会話の中で、誰もすでに人魚兵士に囲まれたことに気づかなかった。
人魚兵士「精霊界からきた高貴なる友よ、ご相談があるので王城へと、女王陛下直々のお誘いでございます。」
アサク「あ、見つかっちゃったか」
人魚国王城へ移動する途中でも、熱心のファンたちが道の両サイドを囲んでアサクに“精霊王子さま、愛してる”なんて歓声を上げていた。
夜の人魚国王城にて、案内された正殿では、人魚女王が王座に座っていて、アサクたちの到着を待っていた。二人は一礼する。
アサク「女王陛下、精霊界のアサクと申します。貴国に来たのはその、事故によることでして、どうかお許しください」
ミカナ「わたくしが人魚国女王・ミカナと申す。付き人の二人も、姿を現すがよい」
ゴーストカードと魔獅子は一斉に術を解いて現し、女王に跪いて挨拶を。
ゴーストカード・魔獅子「ご無礼をお許しください」
ミカナ「よい。状況はわかっている。皆のもの、もう去るがよい」
そして正殿には、アサクたちと女王だけが残っている。
ミカナ「わたくしに着いてまいれ」
女王がアサクたちを宮殿にあるガーデンの一角へ連れてきた。
ミカナ「静かに見ておれ、そして何があっても、アサク、わたくしに合わせておくれ」
どういう意味かさっぱりだが、アサクは了承した。
この時、ガーデンに若い女性が歩き出て、上から真っ白な髪をした精霊らしき男が、女性の前に舞い降りてきた。二人は愛情深くに見つめ合い、男が貝殻とクリスタルで飾った花束を取り出して、女性に話しかける。
白髪の男「人魚姫・ユリア、どうか、俺と結婚してくれ」
ユリア(首を振りながら)「フルフィ様、ごめんなさい。婚約はお母さまにお許しを請わなければ、お約束できませんの」
白髪の男(手を引き)「ならば駆け落ちだ!」
ユリア(もう一度首を強くふる)「私もあなた様をお慕い申し上げておりますが、そのようなことは許されませんわ」
フルフィが強引にユリアを連れて行こうとすると、ミカナ女王が影から出た。
ミカナ「この無礼者、娘からその手を離し、今すぐ立ち去れ!」
フルフィ「女王だからって俺が怖気づくとでも思うのか。本気で暴れたら、この人魚国では俺に勝てるやつなんかいないぞ」
ミカナ「さぞ傲慢とみえる。まあ確かに、わが人魚国は、強いおのこを国王にし国を守ってもらう必要があるが」
フルフィ「はは、それって俺たちの婚約を認めるってことだろう?」
ミカナ「国王は実力と美しさを備える随一のおのこでしかなれぬ」
フルフィ「それはそれは、お褒めに預かり光栄だ、女王陛下」
ミカナ「否、その資格があるのは、そなただけではない。最近王国にいらっしゃった『美しき眠りの精霊王子』が、そなたより容貌が優れて、国民に愛されているのだ」
そう言って、アサクが隠れている物陰に指をさした。
アサクは仕方なく出てきて、どうにもかたくるしい感じで言う。
アサク「俺こそ、真の国王になれる精霊王子だ。貴様、俺をみてさっさと恥じ入って消えるといい」
フルフィ「ならばやってみようじゃないか、誰が勝つか定かではないぞ。な?精霊族のアサク」
アサク「! なんで俺を知ってる??」
フルフィ「……」
ミカナ(一度手を叩く)「もうよい、口喧嘩はおよし。女王たるもの、公正公平でなくてはな。ならば、正式に試合を行うことにしよう。勝つほうが、ユリアの夫となり国王になる。」
アサク「なんだって!?」
フルフィ「のった! いつだ?」
ミカナ「三日後、人魚国のコロシアムにて。」
ユリア「お母さま! なぜそのような勝手な約束を……あんまりです!」
悲しむユリアは泣きながら走っていった。
フルフィ「首洗って待ってろ」
そして飛び立って夜の空に消えた。
アサク・ゴーストカード・魔獅子「はめられた……」
女王は静かに頷いて微笑みをみせた。
正殿に戻ると、アサクがトンと床に座り、とても不機嫌な様子だ。
ミカナ「すまなかった。がしかし、それも無礼を承知で仕方なくしたことなのだ。なにせ、人魚国にはもはや幻獣であるあやつを止めるのに十分な力を持たぬからのお」
アサク「幻獣?フルフィのことですか、女王陛下」
ミカナ「いかにも。あやつが幻獣界百獣国『幻化部族』狐の一族のもの。人魚の民は決して百獣国のものと結ばれてはならぬのだ」
魔獅子「今の幻獣界では三大国が均衡の敵対状態にあります。ゴーストカードと自分も、囚われてないだけでも幸いってくらいです」
アサク「でも、人魚国って軍備がそこまで弱まってますか。それに二人が愛し合ってるのなら、別に硬く掟を守らなくても」
女王が立ち上がり、王笏で王座の真上を指すと、天井が突然崩れて、その奥にあるのは……
アサク「鏡返ノ核!? しかももう真っ赤で……すでに震盪が発生した!」
すぐ【不帰ノ羅針盤】を取り出して、巻き戻された時間を測るが、なんの変化も見られない!つまり、人魚国が『逆時震盪』の影響を受けなかったことになるが、ありえない。一体どういうことだろうと、アサクは驚きを隠せない。
その時、大量の魔物がコアから湧き出して、みなすぐ戦闘態勢に入る。その中の一匹が女王に襲い掛かる。
イリア「陛下! 危ない!」
驚くことに、魔物が女王の体を触れることなく、そのまま通ったのだ。
ミカナ「心配ない。精霊アサクよ、この鏡返ノ核を封印してもらえぬか」
アサク「わかりました!」
仲間の援護でコアに近づけて、【聖獄ノ籠】で封印を成功すると、呪縛から解き放ったように、今まで人魚国を覆う濁った空気が一気に晴れた。
再び王座に座り、女王はことの真相を語り始める。
ミカナ「コアが出現したのが半年前のこと。我が人魚国軍隊の総出でも、魔物の軍勢には太刀打ちできなかった。そして、『逆時震盪』が起きたのだ」
アサク「ではなぜ時間の変化が測れなかったのですか?」
ミカナ「それは巻き戻された時間の長さが130年がゆえ。130年前、人魚国はこの深い海の底ではなく、ちょうどここから真上の島にあった。海に沈んだのが30年ほど前のこと」
ゴーストカード「てことは、震盪のせいで130年前の人魚国が今再びそこで現れたってことですか」
ミカナ「そうじゃ」
アサク「じゃ震盪の後…ここは……」
ミカナ「消し去られてしまったよ、なにもかも。今そなたたちが見るすべてが思念体だ。それでも、我々は今もこのように、ここにおる。」
左耳に飾ってる雫の形をした耳飾りを取り、女王は続けた。
ミカナ「これは人魚国の国宝・【人魚ノ涙】というもの。『逆時震盪』の際に引き起こされた全国民の恐怖と悲しみが、【人魚ノ涙】の力を発動させた。」
アサク(悲しむ)「今目の前の女王陛下も、ここにきてから見た人魚たちもみな……【人魚ノ涙】の力によって保存された魂ですね……」
イリアがもうこえずに泣き出している。
ミカナ「心優しき精霊、アサクよ。わたくしは、ユリアとフルフィの愛を、婚約を認めぬわけではない、できぬのだ。そうさせてしまったら、ユリアも民もみな、国が滅んだこと、自分がもうこの世にいないことを思い出してしまう。どうかこの秘密を、守っておくれ」
二人は涙を流しながら頷いた。
ミカナ「芝居でもよい。フルフィを破り、ユリアと結婚し新たなる国王になって、民に希望を与えてやっておくれ。そしたら【人魚ノ涙】も役目を遂げ、人魚国は幸せ満ちる中で消える。これがわたくしの最後の願い、手伝ってくれるかい」
アサクは黙ったまま頷き、イリアが王城に響き渡るくらい大泣きをした……
三日後。
人魚国のコロシアムは人で賑わっている。ほぼ全国の人がここに集まって、人魚の姫君の夫を決める試合を楽しみに待っているのだ。
用意を済ましたアサクはゆっくりと、会場へ続く廊下を通り、コロシアムに入る。
第五章:幸せの微笑み
神説年暦36722年 8月22日 木曜日 午前十時
ほぼ全国の人が集まったコロシアムでは、熱烈な歓声が上がっている。今日の試合で、ユリア姫の夫となる、新たなる国王が決まるのだ。みなの期待の中で、試合が始まった。
アサクとフルフィはリングの中央に立っている。すでに対峙する二人だが、表情から気持ちの差がうかがえる。今にも暴れ出しそうに興奮しているフルフィに比べて、アサクはどこか悲しみを漂う感じだ。アサクが女王に一目をやると、女王が軽く頷いた。その左には泣き止まないユリア姫に、右がイリアが座っている。
法螺貝を吹き鳴らす音がコロシアムに響き渡り、試合開始!
フルフィが手にエネルギーで形成された槍で襲い掛かり、アサクはゴーストカードと魔獅子の力で武装状態で構える。【日輪ノ剣】と【光ノ槍】がぶつかり合い、火花を放つ。一進一退の攻防戦はどちらも譲らない気合だ。この時、フルフィが“光剣魔法”で攻め寄せてきて、驚いたアサクはすぐ左手のシールドで防御した。
アサク「! 見間違いじゃねえよな、あれは俺の光剣魔法だよね?」
魔獅子「はい、確かに、光剣魔法です」
フルフィ「あれ、おかしいな。アサク、お前魔法が得意じゃなかったっけ?なんで剣ばっかり使うんだ?魔法はどうした?」
アサク「う……」
ゴーストカード「マスター! このフルフィ、なぜか懐かしい気がします。きっと僕たちが知ってるものです。」
フルフィ「面白くなってきたな。んじゃ、遠慮なくいくぜ!」
手のひらからどんどん光剣魔法を打ち、同時にアサクに向かって突進して【光ノ槍】を突き刺す!
アサクは右手に持つ【日輪ノ剣】で【光ノ槍】を受け止め、左手に正三星陣魔法を自分に向かってきた光剣を吸収しようとしたが、三発までしか容量がなく、やはり何発はくらってしまった。そして体を捻り三星陣魔法“極光聖破”を出した!この攻撃を予想できなかったフルフィは間一髪でこの攻撃を避けたが、余裕を与えずに続いて【日輪ノ剣】を振って出された“陽輝閃撃”の挟み撃ちについに負傷、慌ててアサクとの距離を引き離した。
フルフィ「やるじゃないか、でも光属性の魔法攻撃は、同じ属性の俺には効果が出ないぞ。吸収での反撃だけじゃ、俺を倒せない!」
そういって、真っ白な長い髪を持つ精霊の少年の姿が歪み、巨大な白いキツネと変身した!そして周りに同じく白いコギツネが何匹も一緒に現れた。
アサク「うっ、俺キツネ苦手なんだけど……」
コロシアムに悲鳴があちこちから聞こえてくる。人魚国の人たちが逃げ回り、愛する人が異形のものに変貌したのを目の当たりにしたユリアは恐怖で戸惑っていると、これそこがフルフィの真の姿だと女王に告げられ、騙されたと思わず涙がこぼれる。
巨大な体と尾を駆使して攻撃してくるフルフィ。魔法による攻めも止まらず “星雲貫通銃”を出した時、アサクはゴーストカードと魔獅子を離して、両手同時に正三星と逆三星陣魔法を発動し、フルフィが放つすべての光の矢を吸収した。
空中に高く飛んで、両手の手のひらを合わせて、左には正三星の陣、右には逆三星の陣、天地印結!両手の陣魔法が一つになり、光の六星陣魔法を放つ!!
アサク「霸・極光殺陣!!」
全方位からの光剣がフルフィに襲い掛かった。同じ属性だと効果が弱まるが、無数の剣陣でフルフィがバランスを崩したそのすきに――
アサク「こい!【日輪ノ剣】!」
ゴーストカードが変身した【日輪ノ剣】を右手に握って、フルフィの頭の上に飛び乗り、剣のさきを脳天に打ち込みとする時、魔獅子が突然アサクを止めた。
アサク「魔獅子?」
ゴーストカードも変身を解けてアサクにやめるように願った。
アサク「なんで止めるんだ?」
ゴーストカード「フルフィが誰なのか、まだわからないのですか、マスター」
その時、力尽きたフルフィが倒れて、本当の姿――一匹の小さな白いキツネに戻った。
イリア「かわいいですわ!」
ユリア「その姿なら、いいかも……」
女王の睨みで二人はすぐ口をつむいだ。
フルフィ(アサクに跪いて)「強きものに従いしもべとなりて、われここに契約を結ぶことを誓う」
そしてフルフィの体が無数の光の粒子になり、アサクの手のひらに集中すると、ゆっくりと槍の形になった。
アサク「これは…【光ノ槍】だ! 俺が小さな頃に失くしたあの【光ノ槍】だ!」
【光ノ槍】を高く掲げて勝利のポーズをすると、コロシアムに喝采が沸いた。
ミカナ「これにて、アサクを我が国の新たなる国王、わが娘・ユリアの夫となる。さあ、みなのもの、祝言の用意じゃ」
夜、用意された部屋で休むアサクたち。
アサク「あの時、精霊界の『嘯きの谷』から人魚国に流されてたんだ。で、震盪の影響で【光ノ槍】の封印が解かれて幻獣の姿を取り戻したあなたは、ユリア姫に一目惚れして、精霊に成りすまし恋人になった。」
フルフィが黙って頷く。
イリア「だからユリア姫を連れだして、最後くらい幸せになってほしいと思ったのですね。」
フルフィ「……(泣き出す)」
アサクがフルフィの手を取って言う。
アサク「あした、一緒に人魚国を幸せにしよう」
アサクの言葉を聞いて、フルフィは我慢できずに大きく泣き出した。
イリア(フルフィを抱きあげる)「泣かないで、よしよし、フルフィ、イリアとお友達になりましょう」
翌日、盛大な婚礼が行われた。華やかなヴァージンロードを歩くアサクとユリア。傍らにいるイリアの笑顔が、なぜか少し引きつっていた。
女王自らアサクに栄光ノ指輪を付けて、新しい国王の誕生を告げる時、人々は楽しい歓声を上げながら、満面の笑みでありがとうと言い、一人また一人、ゆっくりと消えた。女王がアサクの手を、ユリアがフルフィの手を握りしめ、微笑んで感激を伝えると、耳に飾っている【人魚ノ涙】がひび割れ、二人もゆっくりと姿が消えてゆく。完全に消える前に、女王がアサクにこう言った。
ミカナ「130年前のあの人魚島へ行くがよい。王座に隠してある【人魚ノ涙】を探したまえ。それは幻獣界三大神器の一つ、必ず探し出し、わたくしに届けておくれ」
アサク「届けるって、どうやって??」
女王に聞こうにももう完全に消えて、人魚国にはもう生気が少しも感じなくなって、結界が消滅するとともに、海水が入ってきた。
アサク「ヤバい! 城が水没しちまう! とりあえず地上に逃げよう!」
ゴーストカード「結界が消えたから【折畳ノ廻廊】もう使えるはずです!」
イリアがすぐ【折畳ノ廻廊】を使い、みなを伝送した。
神説年暦36722年 8月24日 土曜日 午後三時
震盪によって再び出現した130年前の人魚島に到着したアサクたち。コアがもう封印されたので、大して強い魔物がいないし、雑魚を片付けていくと、王座の下に【人魚ノ涙】を無事見つけることができた。
アサクは【人魚ノ涙】をペンダントにして、フルフィにつけた。彼はペンダントを握りしめて涙をこらえながら誓う。
フルフィ「……今度こそ、必ずユリアを守って見せるよ」
指に付けられてる栄光ノ指輪をみて、アサクが呟く。
アサク「俺、結婚しちゃったんだな」
イリア(心)「本当に結婚したわけではないのに、なぜかお兄さんが取られた気がします。イリアが落ち込む理由なんか、ないはずのに、この気持ちは……?」
イリア(涙目でアサクに抱きつく)「イリアはずっとお兄さんと一緒にいます。イリアを一人にしないで」
アサク「? どうした? 大事な妹を置き去りにするはずねえだろう。よしよし」
イリア「イリア、お兄さんが大好きです。お兄さんのお嫁さんになるのはイリアだけですよ!」
アサク「え?」
一瞬、沈黙の時間が流れた。
話を変えようとゴーストカードが言う。
ゴーストカード「これからどうします? マスター」
アサク「俺がエデンの村に向かう前に、すでに妖精界の時間図書館で『逆時震盪』が起きていた。そして、今回の人魚国、正直ショックだよ……妖精界の現状が気になる。だから妖精界へ行こう、もしかしたら時間図書館でなにか新しい手がかりが見つけるかも」
一同「うん!」
【折畳ノ廻廊】を開いた。アサク、イリア、ゴーストカード・ウダ、魔獅子・サモエドに新たに加えた幻狐・フルフェ、一行が次なる目的地・妖精界へ向かう。
第六章:矛盾たる真義宝典
神説年暦36722年 8月28日 水曜日 午後七時
アサクたちが妖精界に到着するものの、妖精の森に迷い込み、どうしても妖精王国にたどり着けない。
アサク「妖精界の結界って厄介だな、まるで迷宮みてぇだ。どう歩いても出れねえし、【折畳ノ廻廊】で直接伝送もできない。これじゃいつまでたっても時間図書館にたどり着けねえぞ……」
新しくできた友達のガガ鳥を肩に乗せて、イリアも疲れた顔でいう。
イリア「もう歩けません……少し休憩しましょうよ、お兄さん」
フルフィ「腹減ったー」
アサク「しかたない、キノコを採ろう」
フルフィ「ええ~来てからずっとそれじゃん……」
その時、おいしい匂いがどこから漂ってきた。たどってみると、池の近くに美味しそうな鍋が出来上がっている。
アサク「いい匂いだ!」
フルフィ(マイ食器を取り出して)「準備万端! 食べよう」
アサク「持ち歩いてんのそれ」
フルフィ「みなの分もあるぞ~」
ゴーストカード「盗み食いはよくありません……」
イリア「ひ、一口だけなら、大丈夫ですよね、本当にいい匂い……」
魔獅子は何も言わないが、腹の虫は誠実だ。
おいしい匂いの誘惑に負けて、みなにして “おいしい、アツアツ”と言いながら食べ始めて間もなく、一人の巨漢の怒鳴り声が響く。
巨漢「こら! 盗み食いめ!」
が、アサクと目が合う瞬間――
アサク「カーバン!」
カーバン「アサク!」
二人は古き友と久々再会した嬉しさに抱き合った。そしてゴーストカードと魔獅子にも。
カーバン「まさかまた精霊の守り神たちに会えるなんてな。会いたかったぞ!」
イリアも嬉しくてカーバンに抱きついた。
イリア「これ、カーバンさんが作った野原スープだったんですね!通りでおいしいわけですわ~」
アサク「無事でよかったよ~カーバン」
カーバン「俺先月に火族製錬師の修業を遂げるための素材集めをしに、精霊界から幻獣界に行ったんだ。帰ろうとしたら精霊界が丸々消えた感じでなぜか帰れなくて、連絡しようにも手段がないから、妖精界で何かわかるかもって思って。そんで今食いしん坊のお前らと会ったわけだ。な、精霊界に一体何があったんだ?」
アサク「……カーバン、落ち着いて聞いてくれ」
そしてことの顛末の説明を聞いたカーバンが、力が抜けたように座り込んで、またすぐ起き上がってアサクの胸元を強くつかむ。
カーバン「じゃあみんなは? 他の精霊たちは今どうなってる??」
アサクはカーバンの手が離すようにつかんで、俯いてゆっくり口を開く。
アサク「無事脱出した人がどれくらいいるかわからない。今のところ、俺たちが会えたのは、あなただけだ……」
カーバン「……くそ!」
悲憤に満ちたカーバンの拳は、一発で軽々しく森の木々を殴り折った。
ゴーストカード「カーバンさん、どうしたら妖精王国に入れるかわかりますか?」
カーバン「知ってる。でももう日が暮れた。妖精王国を覆う結界が夜になると無限ループの迷宮になる。王国へ続く道は昼でしか現れないから、日が昇るのを待つしかない」
イリア「本当に迷宮だったんですね。お兄さんが方向音痴だからとばかり思いました」
フルフィ「待つしかねえんだろ?明日のためにも今は腹ごしらえして休もう」
アサク「そうするしかないようだ」
魔獅子「みなさんは休憩を。夜番は自分に任せてください」
カーバン「そういえば、この白いキツネって誰だ?」
アサク「幻獣になった【光ノ槍】だよ」
カーバン「ええ~~、ちょっとアサク、お前、まだ何か隠してねえか?」
アサク「横になりな、ゆっくり話すよ」
神説年暦36722年 8月29日 木曜日 午前八時
朝、アサクとカーバンははっきりと目の下にくまがついてる。一晩中人魚国の出来事をしつこく聞いて、二人とも一睡もしなかったのだ。
ゴーストカード「お二人さん、一晩中ずっと話し込んでてうるさかったですぞ」
魔獅子「同意」
アサク「しつこく聞いてくるカーバンが悪いんだぞ」
カーバン「だってさ、まさかアサクが結婚するとはな、人魚国の国王にまで……それに、あんなのあんまりだよ……」
アサク(軽く肩を叩く)「丸一夜感傷に浸っててもういいだろ? はやく妖精の村に連れていってくれ」
荷物をまとめて、カーバンに続いて森に入り、しばらくして、一つの吊り橋に着いた。
カーバン「この先が妖精の村だ」
村に入ると、そこにはもうひどい光景になっている。
妖精界の東北方向、つまり時間図書館が位置する方には、険しい炎が燃え上がっていて、どうやら魔物が出てこれないように囲んでいるらしい。城下町あたりが戦闘の跡がみられるが、幸い損害が大きくないようだ。
村の妖精たちはみな疲れた様子で、その中に怪我人もいる。アサクをみると、すぐ慌てて知らせに人を出した。
村の妖精「早く女王陛下にお知らせを! 精霊界のアサク様が来てくださったぞ!」
一人若い妖精が駆けてきてアサクに話かける。
若い妖精「アサク様、待ってました! 早く王城にお越しください。女王陛下がお待ちです」
アサクたちが妖精王城に案内され、妖精女王・ルナミアに謁見することになった。
途中に見る正殿がひどく損傷であちこちボロボロになっていて、妖精女王もひどい怪我を負い、寝室に寝込んでいる。寝台のすぐそばまで案内されると、女王に付き添う侍女の一人が、カーバンに飛び込んで泣き出した。
カーバン「俺たちが来たからにはもう大丈夫だ、サナ、心配するな」
アサクとイリアはもう一人の侍女の傍に。
イリア「サヤお姉さん、大丈夫ですか。」
アサク「事情を説明してくれ」
サヤ「二ヶ月ほど前、時間図書館の中央ホールに見たことないコアが現れ、たくさんの魔物が出てきて……女王陛下がすぐ兵を向かわせたんだけど、翌日に急に強烈な震波が起きて、図書館一帯の景色が変わったし、そこにいたはずの人々もみなどこかに消えて……それからすごくでかい岩石巨獣が図書館の外壁に登り出ると、まるでそれが合図みたいに、魔物が外に拡散して周りを攻撃し始めたんです。村がもちろん、王城も免れなくて、最後に女王陛下が古代神器【火竜ノ斧】を異変の境界線に刺して炎ノ結界を張ってやっと、魔物を閉じ込めることができました」
サナ「境界線を越えた魔物を辛うじて退治したけど、それで女王陛下に怪我を負わせてしまいました……守り切れなかった私たちが悪いんです……私……」
そう言ってサナまた泣き出す。
アサク「今すぐ時間図書館に向かって魔物を消してくるよ。でもあなたたちはついてくるな。逆時震盪の影響を受けないのは精霊である俺たちだけだから」
その時、妖精女王が目を覚ました。侍女の二人はすぐ女王の傍にいって、起き上がるをの支えた。
ルナミア「精霊界での出来事はもう、夢を通してすべて知った。これは巨大なる陰謀である。敵が時間図書館を狙った理由は歴史を歪ませること。おそらく図書館で巻き戻された時間の記録は消えてしまったのだろう。どうかそこにある【真義宝典】を探し出して、わらわに届けてほしい。まだ修復できるやもしれぬ」
サヤが一つの水晶玉を取り出してイリアに渡した。
サヤ「この水晶は君たちがいるところの様子を映してくれます。これで【真義宝典】を探すのを手伝います。」
イリア「水晶でこんなことができるなんて、すごいですわ」
アサク「一刻も争う事態だ、出発しよう」
サナ「ご案内いたします」
神説年暦36722年 8月29日 木曜日 午後十二時
みなは【火竜ノ斧】を刺したところまできた。
サナ「一緒に入れないから、私はここまでです。どうかお気を付けて」
カーバンが【火竜ノ斧】に向かって言う。
カーバン「カイネ、お前まだやれるか?」
が、【火竜ノ斧】からなんの返答もない。
カーバン「どうやら炎の結界に集中してるらしい。邪魔しないでおこう」
アサク「でも、どうやって入るんだ?」
カーバン「俺は火の精霊だぞ、任せろ。 (両手を前に掲げて)陣防術・赤焔ノ壁」
カーバンがそう唱えると、火で構成された壁が結界の炎をかき分けて、時間図書館まで道が現れた。
【不帰ノ羅針盤】で測ってみると、なんと、1500年もの年月が巻き戻されたのだ。
アサク「1500年も? なんでそんなに昔にまで……とりあえず今は、中にあるコアを封印して魔物を消すのが先だ。いくぞ!」
火の道を通り、無事にホールまで着いたが、やはりそう簡単にはいかず、図書館の外壁にいた岩石巨獣が、魔物をつれてコアを守りにまた戻ってきた。
ふと気づくとイリアの隣が三尾猿になっている。
アサク「友達変えるの早すぎだろ」
イリア「ガガ鳥は火が苦手なんです。だから三尾猿に付き合ってもらうことにしましたの」
アサク「逆時震盪した空間に入って無事でいられるのは俺たち精霊だけなんだろ。なんで三尾猿を連れてこれたんだ?」
三尾猿がなぜかイリアと同じ淡いピンクの光を発している。
ゴーストカード「僕と魔獅子がこの空間に入れたのは、マスターとの主従関係でマスターの精霊の力で守られているからです。今三尾猿もイリアさんと主従関係になったから、同じように守られていますよ」
イリア(三尾猿を抱いて)「怖がらなくてもいいですよ。イリアお姉さんが守ってあげますわ。一緒に冒険しましょう」
アサク「あっそ。早いとこ用事を済ませようか。イリア、あなたはカーバンと水晶玉を持って【真義宝典】を探してくれ、戦闘中に壊れたりしたら大変だ」
カーバン「おう。イリアちゃんを俺が守る。任せろ」
そして魔獅子を召喚して魔装に変身させて防御を整えるが、ゴーストカードが【日輪ノ剣】に変身できない。
ゴーストカード「図書館の中では日の光が弱すぎて変身できません。このままフォローにまわります」
フルフィ「じゃ俺が!」
そういって【光ノ槍】に変身。槍を手に持つアサクは一振りして嬉しそうに言う。
アサク「この感覚、懐かしいぜ! 一緒に戦うのも久しぶりだな。星雲貫通銃!」
すぐ技を出して岩石巨獣と戦い始めた。
一方、イリアは水晶玉を通し、サヤの誘導を頼ってカーバンと一緒に【真義宝典】を探す。邪魔する魔物を、カーバンは図書館の土属性を利用して“陣防術・石屑爆撃”で打ちのめし、やっと宝典にたどり着けたが。なんと、コアの出現場所が、宝典の真上だ。
カーバン(叫び)「アサク! 宝典を見つけたぞ! コアもここだ!」
三尾猿が隙を見て宝典を取り出して、イリアに渡した。襲い掛かる魔物はカーバンが相手している。
岩石巨獣との戦いがどうもうまくいかない。防御が硬すぎて、傷一つまともに与えられないでいるアサク。
アサク「かたっ!これじゃ倒せそうにないぞ」
フルフィ(半泣き)「いたたた! 壊れる! 俺壊れちまうよ~~」
岩石巨獣の強力な一撃で、アサクとゴーストカードがぶっ飛ばされた。
魔獅子「マスター、申し訳ございません。もう…」
言い終わらないまま、魔獅子の変身が解けてしまい、地に転んで、傷だらけになっている。
アサク「倒せないなら策を変えよう。動けないようにして、先にコアを封印すれば、こいつも消えるだろ!」
フルフィ・ゴーストカード「どうやって??」
ゴーストカード「あっ! (フルフィをみる)光をください!」
フルフィ「! なるほど! その手があったか!!」
ゴーストカードが【光ノ槍】からの強い聖光を浴びて変身し、融合して【天斬のエクスカリバー】となった。【天斬のエクスカリバー】で岩石巨獣を射ぬいて壁に釘付けた。
魔獅子に乗ってコアのところに駆け付けて、【聖獄ノ籠】で封印すると、魔物が一斉に消えた。やっと一件落着と放心して、みんな力尽きで地に倒れた。
妖精王城に戻り、宝典を女王に渡すと、女王は妖精界の生き残った記録士を集めて、過去1500年分の歴史を再び宝典に書き込んだ。が、そこに一つ重大な矛盾を、女王は気づいて、すぐアサクたちを呼んだ。
ルナミア「この世のあらゆる命・物・出来事を記録している【真義宝典】は、間違いはないし、不足もあってはならない。だが……」
アサク「どうしましたか?」
ルナミア「……そなたに関する記述が、一切ないのだ。つまりはアサク、そなたがこの世に存在しないことになる!」
まるでこの言葉を合図のように一瞬周りの空間が歪みだして、それが消えた時には、人々の顔色が何やら違うように見えた。
サヤ「あなた誰ですか! 勝手に踏み入れるなど許されませんよ!」
サナ「侵入者がいます! はやく女王陛下をお守りください!」
ルナミア「この無礼者、わらわの寝室とわかっての所業か」
アサク(慌ててカーバンに)「俺のことわかる??」
カーバン「もちろん」
アサク「イリアは?」
イリア「大好きなお兄さんを忘れるわけありませんよ」
アサク(魔獅子・ゴーストカード・フルフィに)「あんたたちは??」
魔獅子「覚えてます」
ゴーストカード「覚えていますよ」
フルフィ「覚えてるぞ」
アサク「じゃあ、いったい何が……」
女王を守るべく妖精の禁衛軍が駆け付けて叫び出す。
妖精兵士「侵入者を捉えろ!」
カーバン(サナに向けて)「俺のことわかるかい?」
サナ「? カーバンさんでしょう? あなたとイリアちゃんがいてくれたおかげで、コアの魔物を退治できましたわ」
カーバン「どうなってる? そうじゃないんだ、こいつが俺の仲間のアサクだぞ??」
ゴーストカード「とりあえず逃げましょう、マスター」
奇妙な状況で仕方なくカーバンとイリアをその場に残して、魔獅子がアサク、ゴーストカードとフルフィを乗せて窓から寝室から逃げ出した。魔獅子の背に乗って逃亡するアサクは、複雑な気持ちで遠く眺める。
アサク「それじゃ俺は、誰だ?」
to be continued~
google play 圖書『アサク伝X真龍の魂』
同時也有33部Youtube影片,追蹤數超過7,420的網紅まとめまとめの,也在其Youtube影片中提到,【まとめのまとめ】 チャンネル登録はこちら https://goo.gl/QN6ioA 今年の父の日と誕生日 重なったんだ、 単身赴任中で特に期待し てなかったけど金曜の夜帰宅した 土曜日、大学生の娘は 教習所とゼミの発表準備、 息子は大学模試、嫁は 施設で父の日の ボランティア活動で夜は ...
気持ちが沈んだ時の対処法 在 張國耀 Chong Kok Yew Photography Facebook 的最佳貼文
策展訊息 :
台北駐日經濟文化代表處台灣文化中心 歲月之旅–張照堂攝影展
歳月の旅–張 照堂写真展 ( 2015 / 9 / 1 – 10 / 30 )
レセプション : 2015 / 9 / 1 (火) 14 : 00 – 15 : 00
特別講演会 : 2015 / 9 / 1 (火) 15 : 00 – 16 : 30
司会 : 菅沼比呂志(ガーディアン・ガーデン/プランニング・ディレクター)
講師 : 瀬戸正人(写真家), 張照堂(写真家 / 台南芸術大学名誉教授), 沈昭良(本展キュレーター / 写真家)
開館時間: 10:00-17:00(土、日曜 & 祝日休館)
会場 : 台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-1-12 虎ノ門ビル2階
http://jp.taiwan.culture.tw/content_32.html
2013年9月,台北市立美術館為張照堂舉辦了名為「歲月照堂」的大型回顧展,展覽整體採編年式架構,分別為「少年心影」(1959-1961)、「存在告白」(1962-1965)、「裝置 / 塗鴉 / 原作」(1966-1986)、「社會記憶 / 內心風景」(1970-2005)、「數位發聲」(2005-2013)與「歲月容顏」(2005-2013)等六個主題,內容除了放大與輸出的攝影作品400餘件,也包括8部紀錄影片、裝置、拼貼、攝影原作、編輯刊物、繪本、手稿、歷年展出文宣等等,橫跨張照堂過去所涉略的電影、紀錄片、攝影、現代藝術、文學、劇場、出版等領域。
展出期間,除了吸引成千上百各個世代,不同領域的觀眾留連駐足,更引發相關的學術著述與研究討論,展出規模之全面,影響之深遠,可說是國內攝影藝術圈有史以來所僅見。不僅完整呈現張照堂的影像風格與美學品味,更確立其在台灣攝影與跨領域影像發展脈絡上,承先啟後的卓越成就與崇高地位。日本著述家暨愛知三年展總策展人港千尋,即曾在現代美術學報中坦言:「張照堂不只是一位傑出的攝影家,更是每個國家只可能僅會出現一兩位的那種藝術家。」
張照堂,1943年出生於台北縣板橋鎮(現新北市板橋區),父親為執業醫生,兄弟姊妹共七人排行第五,初中三年級時,向大哥借了一台Aires Automat 120相機把玩,卻也因此開啟了他不凡的影像人生。成功高中時期,參加攝影社團受教於鄭桑溪,其後雖進入台灣大學土木工程系就讀,反倒積極參與藝文活動,廣泛閱讀現代、存在主義文學,並開始觀念性的攝影創作。
大學畢業後分發至離島澎湖服役,退伍後的1965年與鄭桑溪共同發表「現代攝影雙人展」,迥異於當時唯美沙龍與社會寫實的現代視覺語言,自然招來當時傳統攝影圈頹廢消極的惡評,但卻也引起美術與文學界的鼓舞與關注。1968年張照堂進入電視台,從事新聞採訪、專題製作與紀錄片拍攝。1974年也曾瀟灑舉辦了「攝影告別展」。其後二十餘年,他全面性參與紀錄片與電影劇情片的拍攝製作,1997年就任國立台南藝術學院(現國立台南藝術大學)音像紀錄研究所教授,傳道授業,提攜後進不遺餘力。1998年籌劃首屆台灣國際紀錄片雙年展。生涯迄今獲頒有金鐘獎、金馬獎、國家文藝獎及象徵最高榮譽的行政院文化獎等重要獎項。
出生及成長在台灣的張照堂,歷經日本殖民、國府統治、黨外運動、解除戒嚴及總統直選等時期,自初中三年級的接觸相機以來,作品從不為針對特定議題的計畫性拍攝,反而幾乎都是工作之餘的隨性抓取,卻也因此定調了獨特的攝影風格,同時據已清晰回應伴隨他的歲月和時代。誠如評論家郭力昕所言:「張照堂成長於一個極度壓抑、苦悶的年代,並且在這樣的時代氛圍裡,走過了他創作的精華歲月。臺灣的這個時代背景,政治空氣是高壓、肅殺的,攝影文化是空白或貧乏的,張照堂的攝影藝術,就在這樣的政治與文化悶局裡,迸出了一個獨醒的、清越的高音。」
張照堂的作品,除了初中時期作品所展露的直觀純粹,大學時期則因喜愛接觸現代文學與藝術,面對當時台灣社會的政治高壓與思想箝制,攝影頓時也成為他抒發內心寂寥與撫慰外在荒蕪的材料,此時期那些塗抹的白臉、頭套塑膠袋和無頭身影的作品,在日後更被視為台灣現代攝影語法轉向的重要實踐。退伍後,進入媒體工作的張照堂,持續透過觀景窗,緊貼著台灣社會的氛圍與脈動,在城市、巷弄、荒郊和鄉野間,大量超現實語境與荒謬劇場式的作品,引人緘默也發人省思。其後,順應數位時代的來臨,張照堂援用了科技的便捷,將其轉化為攝影表現的另類可能,先前曾在「歲月照堂」回顧展中,陳列展示的拼組作品<夢遊-遠行之前>與<台灣-核災之後>兩系列實驗性組作,則是2005年進入數位時代後持續進行的創作類型。
綜合過去對於張照堂作品相關論述與研究的歸納,普遍將其創作風格,定調為抵抗當時台灣所處高壓統治與社會處境的精神性衍生,透過其所獨具的攝影眼,心理的,身體的,尋常的,淡然的,直覺的,進一步提出對於現狀的某種超脫與預知。然而,對照張照堂初中時期所拍攝的「少年心影」系列作品,其中所大量穩定展現,有別於那個年齡世代應有的尋找與凝視,很顯然的,他的成就,應不只是時代的重壓與凝鍊所積累而成,有相當確定的一部分,是那一股自幼在他身體血液裏,早已循環流淌的豐富素質與內斂情感。
此次受邀在台灣文化中心展出的23件作品,主要是挑選張照堂在1970-1990年間所拍攝,聚焦在社會記憶與內心風景,同時也回應本展”歲月”與”行旅”意象的精要式集結,除了作品本身的時間跨度,足跡也行旅式的遍及基隆、台北、桃園、苗栗、新竹、嘉義、屏東、宜蘭、花蓮和澎湖等地。其中,望安島上的少女容顏,阿里山上的日出遠眺,鼻頭角港邊的餘暉小憩,算命看板前的晃動身影,水岸邊的駐足凝望,車廂理的沉睡舒醒…。時而匆忙,時而停歇,時而展望,時而掩面,時而奮起,時而喘息。讓我們在人物近景與環境身影的視覺導引下,橫向與縱向的氛圍轉折中,重返那個蒼茫年代,重新經歷那個靜謐時空,領略張照堂在漫長的歲月行旅中,不斷遺落卻又不斷拾起的無盡視野與動人話語。 文 / 沈昭良
2013年9月、台北市立美術館で、張照堂(ジャン・ジャオタン)の大型回顧展「歳月/照堂」が行われた。展覧会は年代別の構成を取り、「少年の心」(1959-1961)、「存在の告白」(1962-1965)、「インスタレーション / グラフィティ / オリジナルプリント」(1966-1986)、「社会の記憶 / 心象風景」(1970-2005)、「デジタルでの発信」(2005-2013)、および「歳月の表情」(2005-2013)という六つのテーマに沿って、大きく引き延ばされた400点余の写真作品のほか、8本のドキュメンタリー映像作品、インスタレーション、コラージュ、オリジナルプリント、編集に関わった印刷物や絵本、手書き原稿、過去の展覧会のチラシやポスターなどが展示され、これまでに張照堂が関わって来た、映画、ドキュメンタリー映画、写真、現代美術、文学、舞台、出版など様々な領域を横断する展覧会となった。
会期中は、おびただしい数のあらゆる世代の観客だけでなく、様々な領域で活動する数多くの観客が足を運び、ここから学術論文や研究討論が生まれた。展示規模は全面的であり、展覧会が社会に与えた影響は計り知れず、台湾の写真芸術史上においても稀な事件であったと言ってよい。展示は、張照堂の写真スタイルやその美学を完全な形で伝えていたのみならず、台湾の写真や領域横断的な映像の歩みにおいて、張が先人の成し遂げたものをさらに刷新していく卓越した存在であることを強く印象づけた。日本の写真家で愛知トリエンナーレ2016の芸術監督を務める港千尋は、(台北市立美術館発行の学術誌)現代美術学報において、「張照堂は、傑出した写真家というだけでなく、いずれの国にも、ひとりかふたり出て来るか、というような芸術家である。」と述べている。
張照堂は、1943年に台北県板橋鎮(現在の新北市板橋区)に、医者である父のもとに、七人兄弟の五番目として生まれた。中学三年生の時、兄にアイレス・オートマット120というカメラを借りて遊び始めたことが、彼を、後の非凡な映像人としての人生へと導くことになった。成功高校に通っていた頃には、写真サークルに参加して鄭桑溪(ジェン・サンシー)に師事し、その後台湾大学土木工程学部に入学したものの、専門の勉強よりも芸術文化活動にいそしみ、近代文学や存在主義文学を読みあさり、コンセプチュアルな写真制作を行い始めている。
大学を卒業した張照堂は兵役に就き、離島の澎湖に配属された。退役後の1965年には鄭桑溪とともに「現代写真雙人展」を行い、当時の唯美的サロン写真や社会リアリズム的な近代視覚言語とはまったく異なる作品を発表した。当然のことながら、当時の伝統的な写真界においてはデカダンで消極的だという悪評を招いたが、美術界や文学界からは激励され、注目を集めることとなった。1968年に張はテレビ局に入社、ニュース取材のほか、特別番組やドキュメンタリー映画の撮影に従事した。また、1974年にも、曾瀟灑(ゼン・シャオリー)と「撮影(写真)告別展」を行っている。二十数年ほど、精力的にドキュメンタリー映画やドラマ映画の撮影に関わった張は、1997年には国立台南芸術学院(現・国立台南芸術大学)の音楽映像ドキュメンタリー研究所の教授となり、後続の育成に力を注いだ。1998年には、第1回台湾国際ドキュメンタリービエンナーレの準備に関わっている。これまでに、金鐘賞、金馬賞、国家文芸賞および台湾にて最高栄誉とされる行政院文化賞などの重要な賞を受賞している。
台湾で生まれ育った張照堂は、日本の植民地支配、国民党による統治、党外運動(訳注:民進党誕生以前の台湾における民主化運動)、戒厳令解除や、総統直接選挙などの時代を生き抜いてきた。初めてカメラに触った中学校3年生の頃から、作品は特定のテーマに沿って計画的に撮影されてきたわけではないが、むしろ仕事のあいまをぬって気ままに撮り続けてきたことが却って、独特の写真スタイルをそこに定着させ、ともに歩んだ歳月と時代とを、はっきり映し出すようになった。これについて、評論家郭力昕(グォ・リーシー)は次のように述べている。「張照堂は極度に抑圧された苦悶の時代に生まれ育ち、そのような時代の雰囲気の中で最も優れた作品を生み出した。この時代の台湾の政治的空気は高圧的・粛殺的であり、写真文化は空白でないとしても非常に貧しいものであった。張照堂の写真芸術はそんな政治・文化的に鬱々とした状況にあって、孤高の澄み切った高音を響かせたのである。」
張照堂の作品は、中学校時代には直感的な純粋さをみせていたが、大学時代には、彼の近代文学や芸術への傾倒のために、当時の台湾社会の高圧的な政治や思想統制へと向き合い、内面の寂寥を表現し、荒寥とした外界への慰めとなった。この時期発表された白塗りの顔や、頭に被ったビニール袋、頭のない身体を写した作品などは、その後ますます、台湾近代写真の語法を転換させる重要な実践であったと見なされるようになった。兵役からの退役後マスコミでの仕事を始めた張照堂は、それ以降もファインダーをとおして、台湾社会の雰囲気や脈動に切迫する大量のシュルレアリスティックで不条理劇的な作品を、都市や路地、荒れた郊外や農村で撮影し続け、観る者を沈黙に導き、内省を促した。その後張はデジタル時代の到来に順応し、そのハイテクの利便性を用いて、写真表現の新しい可能性を追い求めた。先の「歳月照堂」回顧展で展示された《夢遊—遠行の前》と《台湾—原発事故後》のふたつの実験作品シリーズは、2005年にデジタルカメラを用い始めて以降、張がずっと取り組んでいるものである。
これまでの張照堂の作品についての論文や研究には、その作品スタイルを、当時の台湾の高圧的な統治や社会状況に身を置くことで生まれる精神性との関連について語るものが多い。独自の撮影眼をとおした、心理的で身体的、さらりとして飄々とした直感的な表現だと捉え、さらには現状に対するある種の超越を提言する予言だとする。しかしながら、張照堂が中学校時代に撮った「少年の心」シリーズの、大量で安定した表現と比べてみると、このくらいの年の少年が当たり前に持っている探究心や対象の凝視とは、明らかに異なっていることがわかる。彼が成し遂げたことは、時代の重圧と精錬の蓄積のみによるものとは言えないだろう。そこには幼少時より彼の身体の血の中に循環していた写真家としての豊かな素質と、含蓄に富む情感が、必ず影響していたはずだと思うのだ。
今回台湾文化センターで展示する23点の作品は、張照堂が1970年から1990年のあいだに撮影したものを中心に選び、社会の記憶と心象風景に焦点を当てた。これらは同時に、先に述べた展覧会の「歲月」と「旅」の意象から精選したものでもあり、作品がくぐり抜けて来た長い時間だけでなく、作家が基隆や台北、桃園、苗栗、新竹、嘉義、屏東、宜蘭、花蓮や澎湖などの各地を旅した足跡を辿るものともなっている。望安島の少女の表情や、遠くに臨む阿里山の日の出,鼻頭角港の傍で夕焼けを眺めながらのひとやすみ、占いの看板の前で揺れ動く人影、水辺で足をとめて遠くを見つめる人、電車の中で眠ったり気持ちよく目覚めたりする人々…。時にあわただしく、時にゆったりと、時に遠くを眺め、時に顔を隠し、時に奮起し、時に息を荒くする。我々は、近景の人物と周囲の物影という視覚に導かれるように、水平や垂直の雰囲気の変化の中で、あの蒼茫たる時代に立ち戻り、あの静謐な時空を再び体験する。張照堂の長い歳月をかけた旅の中で、絶え間なく置き去りにされ、また絶え間なく掬い上げられてきた無限の視野と、心を動かす物語を味わいながら。
テキスト/ 沈昭良(シェン・ジャオリャン)
気持ちが沈んだ時の対処法 在 まとめまとめの Youtube 的最佳貼文
【まとめのまとめ】
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今年の父の日と誕生日
重なったんだ、
単身赴任中で特に期待し
てなかったけど金曜の夜帰宅した
土曜日、大学生の娘は
教習所とゼミの発表準備、
息子は大学模試、嫁は
施設で父の日の
ボランティア活動で夜は
打ち上げの飲み会
昼も夕飯もコンビニ弁当と
缶ビールだったw
夕飯のコンビニ弁当を
買いに行ったら、
自宅に居る理由が無くなっ
てるのに気が付いた
書き置きして赴任先に戻った
夜11時頃、ラインで
嫁から大人気ないって入っ
てた既読スルー、
翌朝ごめんなさいとか
入っていたけどよく読んではいない
このまま盆まで帰る
つもりは無いが、
読んでないラインがうるさい
女々しくてキモい
帰ったら家の中が
もぬけの殻になっていればいい
50も近いんだろうがガキかよ
あまりにまガキで草
お前の自宅は何処なんだよ
察してちゃんうざすぎ
病院行った方が良いぞ、
鬱の前触れ
お父さんだってたまには
いじけても良いんだよ。
赴任先の孤独を考えたら
叩いてる奴ら本当に気団の
単身赴任者か?と疑いたくなる。
父の日の夜にガッカリして
帰ったのなら妥当
土曜なら意味不明
勝手に父の当日に帰った
のかと読み違いしてたわ
前日に帰ったんならそらヤベーなw
え、だって赴任先に帰る
時間が必要だから日曜は
午後までしか居られんちゃうの?
アホだろ
当日にいないわけでもなく、
事前にアナウンスした
訳でもない子供だって
遊び呆けているわけじゃない
若い頃に自分の親には
今の自分が満足するような
事をしたのか100万回
問いただしたいw
俺もまるきりそう思ったわ。
まあ嫁が誕生日忘れてる
のは酷いけどな。
自分が20才過ぎてパッパ
誕生日おめでとーなんて
やってたのかと。
単身赴任は家族の
せいじゃないからな
最初に謝罪なら良かったけど、
大人げないはないわ…
帰宅する事アナウンスし
てたのかな?
まあ、それだけ家族の予定
把握してたら帰省しなくて
良かったかも知れんな
手紙が余計だったかな
黙っていけばよかったんじゃね?
人事でないので痛いくらい
分かるぞ。
手紙書くほどまめではないが…
そもそも自宅ってのは
赴任先にしかないのさ。
日曜なら父の日と
誕生日だと思うが家族が
いなくて拗ねたのは土曜の事だろ?
が詳しく書いてないのに
熱くなりすぎ
日曜の午前中午後に
赴任先へ帰るだろ
そもそも単身赴任先から
旦那が帰ってきてるのに
子供はともかく飲み会に
参加する妻って
ダメじゃないですかね
日曜日の夕方に戻るから
土曜日がメインの
気持ちだったんじゃね?
つうか、嫁はLINEで
謝罪してるだけで2週間
経っても単身赴任先に
謝罪にすら来てないってことだろ?
そりゃー拗ねたくもなるわw
え これ単身赴任先まで
来て謝らないといけない案件なの?
家族の対応云々も娘と
息子に学業や教習疎かに
してでも祝ってほしかったの?
ずっとLINE無視されて
いることなんとも
思わないなら行かなくて
いいんじゃない?
てか誰か書いてたけどこれ
男女逆ならかなら大事になるのにな
男だとかおっさんだから
わがままとかって言い分を
「ここ」で言える神経がわからんわ
男女逆でもなんで前日に
逃げたんだってならんか?
日曜当日忘れられてた
蔑ろにされたならわかるが
いやだから誕生日父の日は
本質じゃないんじゃない?ってこと
逆に聞きたいんだが叩い
てる奴らは
「これが初めて」だと思うのか?
単にもう
「亭主元気で留守がいい」
って思われてるだけだろ
俺が同じ事されたら確実に
嫁捨てるだろうな
批判してる奴はよく考えてみろよ
その日が忙しけりゃ先取り
するとか出来るだろ?
それすらせずに逆切れだぜ
ちょっと何いってるかわからない
819です
メッチャ叩かれてたんで
尻尾巻いて沈んでいましたw
子供の学業の邪魔はしませんよ、
そこまで馬鹿じゃないです
別に謝りに来いとは思っ
てないです、
はい
嫁の飲み会がチョット腹が
立ったのは事実ですけど
単身赴任4年目で、
赴任先でも遊びの誘いも
あったんですよね、
飲みとか釣りとかゴルフとか毎年、
父の日は帰ってきて
欲しいって要望もあって、
こっちの誘い断って帰ったわけです
七夕じゃないけど月イチの
夫婦生活ってのもありますしw
でも、アパートに一人いる
のと変わらないし、
日曜の下りの午後の
新幹線は混むので戻った訳です
先週と先々週は、金曜の
夜は呑んで次の日はゴルフ
三昧でしたw
まあ、周りにも帰らないの?
って聞かれましたが、
帰らないって結構
楽しいって初めて思った次第です
バランス的に家族に依存し
てた自分に気が付いた面も
あります、
もう少し個人として人生
考えなければなんてね
嫁とは、ラインじゃなくて
直電でもメールでも連絡は
つくのに、
ライン入れとけば済むって
考え方も嫌なので
しばらくは傍観してます
定年後も一人で大丈夫なら
それで良いだろ
ラインとメールで価値が
違うとか面白い思考の人だな。
ほんとに謝罪する気持ちが
あるなら返事の来ない
LINEだけじゃなくて
必死こいて他の方法でも
連絡取ろうとする
もんでしょってことだよ
とりあえず、給料の振込
口座を嫁が握ってるなら
取り返すか、
口座を変更して生活費は現金で渡せ
誰に食わせて貰ってるか、
思い出させてやれ
そんなことしたら今でさえ
何も言わずにいじけたり
拗ねたり無視したりして
ウザい父親が頭オカシイ
やつ扱いされるようになるだけ
嫁さんからの要望で
帰ったのにその扱いな
んだったらそりゃ怒っていいよ
でも長引かせると
拗れるから程々で許すのがいいよ
1人で楽しむのは、
たまにだから良いんだよ
気持ちが沈んだ時の対処法 在 YouTube Speaker Yoshihito Kamogashira Youtube 的最佳貼文
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YouTube講演家 鴨頭嘉人
株式会社東京カモガシラランド 代表取締役社長
株式会社鴨頭シーパラダイス 代表取締役社長
株式会社カモガシラ・スタジオ・ジャパン 代表取締役社長
高校卒業後、東京に引越し19歳で日本マクドナルドにアルバイトとして入社 4年間アルバイトを経験した後、23歳で正社員として入社。 30歳で店長に昇進。32歳の時にはマクドナルド3300店舗中、 お客様満足度日本一、従 業員満足度日本一、 セールス伸び率日本一を獲得し最優秀店長で表彰される。 その後も 最優秀コンサルタント。 米国プレジデントアワード、米国サークルオブエクセレンスと国内のみならず全世界のマクドナルド表彰も全て受賞する功績を残す。
2010年に独立。現在は組織構築・人材育成・セールス獲得についての講演・研修を行っている日本一熱い想いを伝える「炎の講演家」として活躍する傍、株式会社3社の経営とNPO法人1社の経営、出版社も運営。
著者としてもリーダー・経営者向け書籍を中心に14冊(海外2冊)を出版する作家としても活躍。
2013年、伝わるコミュニケーションスキル・伝えるスピーチスキルを身につける「話し方の学校」を設立。現在7,000名以上に【目的が達成できる伝達力】を教えている。2016年、出版社「かも出版」を設立。2019年、講師業、YouTuberとして自ら成果の出た「自分の売り方」を体系化し、ビジネスYouTuberに特化した「ビジネスYouTuberの学校」を開校。
有料オンラインサロン人気ランキング日本第5位 良い情報を撒き散らす仲間を増やすコミュニティ「鴨Tube研究所」、日本第6位 良質で最新のビジネス情報を共有できるコミュニティ「鴨Biz」を主宰。
また、【良い情報を撒き散らす】社会変革のリーダーとして発信しているYouTube(通称 鴨Tube)は、登録者94万人を突破。講演家、自己啓発部門では日本一の影響力を発揮している。
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こんばんは、バランです。今回は星野源さんの『さらしもの』を想像で歌うという暴挙ですね。相変わらず素敵です。
ところで、よく情報番組なんかで、アメリカの非行少年が"『私はこういう罪を犯しました』って書かれた看板を持って長時間立つ"という刑罰を与えられているのを見ることがありますよね。
ある意味ではあれも『晒し者』だと思うんですけど、最近、中国の一部の都市では、より"ハイテクノロジー"な『晒し者システム』が出来ているそうです。ほう?
どういうシステムかっていうと、例えば信号無視をした歩行者がいるとするじゃないですか。悪い奴です。
で、信号無視をしたらすぐに『顔認証システム』が発動して個人が特定されるんですって。へえ。
そして、その違反者の顔写真と個人情報が『街頭スクリーン』に表示されるそうですよ。ほー。
まさに現代版の『晒し者』ですよね。すごいな。
ちなみに、フランスでは信号無視をした場合『近くの電子パネルがそれを感知して、すぐさま爆音のブレーキ音を流す』というキャンペーンが行われているそうです。
信号無視をして後ろめたい気持ちになっているところに、突然ブレーキ音が鳴り響くわけですから、そりゃあビビる。
だって車に轢かれたかと思うもんね。ええ。
で、そのびっくりした顔は自動で撮影されて『これがあなたの人生最後の表情ですか?信号は守りましょう』ってパネルに表示されるんですって。
ハイセンスかよ。これは信号守りたくなる。うん。
ところで、『晒し者』と聞けば僕はマリーアントワネットさんが浮かびます。
『パンがなければケーキを食べればいいじゃない』で大ひんしゅくを買って
ギロチンで『晒し者』として処刑された王妃です。可哀想。
ですが、このお話には2つの意外な真実があります。はい。
まず、『ギロチン』についてです。あ、今普通にギロチンをテーマに選びましたけど
ギロチンをトークテーマにして楽しそうにおしゃべりする人って、僕以外にいるんでしょうか。
ふと思っただけですけど、何故か不安になります。
まあ、とりあえず、ギロチンってめちゃくちゃ残酷な処刑器具って感じしますよね。
でも真実としては「死刑囚に苦しみを与えないために工夫した処刑方法」がギロチンだったんですって。『ギロチン処刑』のアイデアを提唱したギヨタンさんが言っていたそうです。ふーん。
事実、ギロチン処刑が導入される前の死刑方法は『斬首』、つまり刃物で首を切るという方法だったんですけど
技術のある処刑人でなければ中途半端な斬首になってしまい、余計に苦しんでいたそうです。
あ、ハリーポッターのゴーストにそういうの居ましたよね。確かにあれは嫌ですね。ええ。
ちなみに、ギロチンを見に行くなら、ベトナムの『ホアロー収容所』がおすすめです。
実際に捕虜が収容されていた施設で、リアリティがハンパないです。マジで。
あまりのリアリティに、心霊スポットにいく時よりも怖いと言われています。やべえやつです。
そして、リアリティといえば『Battle of Camlann』っていうゲームをご存じですか?
VRのゲームなんですけど、その中に実際に斬首のシーンがあるそうで
プレイした人があまりのリアリティに、気絶してしまったんですって。
斬首の瞬間の息苦しさや意識混濁の感覚があり、VRでの体験が実際の身体に影響したのではないかと言われているそうです。VRが現実に侵食してくるなんて、夢の外へ出られないあの感覚と同じ恐怖を感じます。怖っ。
このゲームのプレイは絶対にお勧めしません。はい。
あ、そうそう。これと似たようなエピソードは映画『パニッシャー』にも出てきますよね。
服を脱がせ、拘束した囚人の背中にアイスキャンディーを当てるシーンなんですけど
普通に考えたら、『うわっ冷たっ!』ってなるだけですよね。ええ。
でも、『お前の肉が焼けているぞ』って言葉をかけながら、見えないところで市販の肉をバーナーで炙るっていうギミックを仕掛けるんです。
すると、アイスキャンディを背中に当てられているだけなのに、大やけどしていると思い込むわけです。なるほど。思い込みって怖いですね。ええ。
さて、マリーアントワネットさんのお話に戻りますが
ギロチンの使用と同じくらい有名なセリフ『パンがなければケーキを食べればいいじゃない』についても、意外な事実があります。
まあ、このフレーズだけ聞けばマリーアントワネットさんは『高飛車』とか『庶民の気持ちの分からない貴族』、『軽率でわがまま』みたいなイメージを持つと思うんですけど
実際は『パンの原料である小麦の値段が高騰しているなら、安い小麦を使っているブリオッシュ(菓子パン)を食べればいい』という意味で言っていたそうで
つまりは『原材料費の安いものを食べましょう』っていう、至って普通のことを言っていたんですって。意外。
実際、ギロチンで処刑される直前に、マリーアントワネットさんは死刑執行人の足を踏んでしまうのですが
その時に『お赦しください、わざとではありません』と言ったそうです。
うわ、めっちゃ気配りのできそうな気品。ここにいないあなたへ伝えたい。恋しそうです。
ちなみに、一説によるとギロチンでの処刑の際には通常顔を下に向けるところ、マリー・アントワネットのときには見せしめのため、恐怖を与えようと
『わざと顔を上に向けて』刃が落ちてくるのを見えるようにしたとも言われているそうです。ニーチェ的に言えば『ル・サンチマン』ってやつでしょうか。
ここまでくると、世論とマリーアントワネットのどちらが『軽率でわがまま』なのかよくわからなくなってきます。人道的な処刑器具のはずだったのにね。はい。
ところで今、マリーアントワネットさんも言及していた『パン』についてなんですけど
実は世界史を紐解くと、『パン』は世界の様々なシーン登場します。
例えば、イエス・キリストの『共観福音書』では、パンと葡萄酒をそれぞれ「自分の体」「自分の血」として弟子たちに与えていますし
イングランドの詩人ジョージ・ハーバートさんは『希望は貧者のパンである』という言葉で、希望を持ち続ける重要性を説きました。
他にも、ドイツでは『芸術はパンに従う』という言い回しで、「どんなに優れた芸術でも財力が無ければ始まらない」ということを表したりします。
ちなみに、『花より団子』という諺が日本にもありますが、アメリカでは『鳥の歌よりパンがいい』と言われているそうです。さすがに鳥も『歌を歌うときくらいパンは置けよ』って思うと思うんですけど
何処の国も考えることは同じですね。はい。
それから、company(カンパニー)っていう英単語があるんですけど
これは、ラテン語でcom(みんなで)pan(パンを食べる)、つまり『同じ釜の飯を食った仲間』から
『会社』だけでなく『仲間』とか『人との付き合い』みたいな意味を持つそうです。なるほど。
あ、そうそう。『パン』は英語で『ブレッド』ですけど
じゃあ英語の『pan』はどういう意味か知ってますか?「天秤のお皿」って意味だそうです。へえ。
急に全然違う意味になりましたね。天秤ですか。
天秤と言えば『裁きのシンボル』として弁護士バッジにも描かれていますが
これは、古代エジプトの古文書『死者の書』の中で、死者の裁判官であるウンネフェルが
死者の心臓(罪)と女神の羽(真実)を天秤にかけて審判を下していたことがきっかけだそうです。
いや、羽と心臓って。流石に誰がやっても心臓の方が重いと思うんですけど、でもそうなると地獄行きだそうです。マジかよ。
え?地獄でなぜ悪いかって?化物に魂を喰われて二度と転生できなくなるからです。はい。
ところで、物の重さをはかる技術って色々ありますよね。
でもその中でも一番有名なのは、やはり『てこの原理』ではないでしょうか。
あれって、誰が考えたか知ってます?僕は「てこ」さんだと思ってたんですけど
実は物理学者のアルキメデスさんだそうです。めっちゃ有名人ですね。へえ。
お風呂に入っていて、自分の体が沈むと同時に湯船からお湯があふれたのを見て
『浮力の原理』を発見したことで有名な学者さんですよね。
その後、『エウレカ!』(わかったぞ!)といって裸で街を飛び出したみたいな笑い話が
語り草になっていますけど、当時のギリシアでは男性は外で裸で運動するのが普通なので
そんなに非常識なことではなかったようですよ。へえ。
まあ、アテネで行われていた古代のオリンピックも、全員全裸だったそうですし(知ってた?)
そう考えれば、裸で外に出て走り回るのも日常なのかもしれません。凄い価値観だ。
第一回オリンピックのフィルムとかあったら、絶対笑います僕は。だってギャグでしかないもん。ええ。
まあでも、当人たちは本気でしょうから、そういう意味ではくだらないの中にも熱意やスポーツマンシップといった、素晴らしいものは垣間見えるのかもしれませんけどね。はい。
ちなみに、このアルキメデスさん、他にも様々な発見をしているのですが
その中でも一番ヤバいのは『アルキメデスの熱光線』という逸話でしょう。
すごく簡単に言うと、めちゃくちゃでかい虫眼鏡の要領で太陽光を集めて
遠く離れた敵船にそれを照射し、敵船を大炎上させ撃退したという逸話です。発想がやばい。ビームじゃん。
いやー、僕もここまで概要欄や動画編集でやってきていますけど
一度くらいは皆さんの視線を集めてみたいですよね。それこそ、アルキメデスの熱光線くらいの熱量で。はい。
あ、でも熱光線浴びたら大炎上するのか。それはだめだ。助けてドラえもん。
(バランより。)
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